岩倉具視と大久保「打倒慶喜」へ企てた策がヤバい

徳川15代将軍に振り回された2人の大胆な決断

公家をまとめるには、中山忠能、正親町三条実愛、中御門経之の3人の説得が肝となる。命運を握る説得役を、岩倉は大久保に託すことにした。

この男ならば、やってくれるはずだ――。岩倉のそんな期待に大久保は見事に応える。中でも苦労したのが、中山忠能だったが、大久保は数時間もかけて説得に成功した。

以前、岩倉はあまりにつらい蟄居生活の中で、内心の焦りを大久保に吐露したことがある。そのとき、大久保からはこんな言葉でたしなめられた。

「ともかくしばらくは<忍>の一字をお守りください」

自分のことを本当に思うからこその大久保の言葉を受けて、岩倉は蟄居生活を耐え抜くことができた。今もまさに、新しい時代を実現すべく、我慢強く事にあたるべきときだ。公家を説得するにあたって、大久保以上の適任者はいないと、岩倉は考え、大久保も見事に結果を出すことになった。

クーデターの決行日についても意見が割れた

それでもまだ苦難は続く。クーデターの決行日について、意見が割れた。発覚を恐れた西郷と大久保はいち早く8日を主張したが、朝議の都合がある中山忠能は9日を希望。土佐藩の後藤象二郎はといえば、藩主の山内容堂の到着が遅れるので10日を要望して、意見がなかなかまとまらなかった。

「苦心が絶えず、途方に暮れてしまう」

岩倉はそうこぼしながらも、各方面と交渉のうえ9日で調整に成功する。そして薩摩、土佐、福井、尾張、芸州の5藩の重臣が岩倉の家に集まると、段取りを確認。「朝6時に5藩の主人が参内し、それに合わせて、5藩の藩兵が御所を警護する」というのが、実行の流れである。

もし、事前に漏れたら、クーデターは台無しになる。そんな緊迫感が漂う中でも、人の話を聞いていない者はいつの時代にもいる。決行日、尾張藩の兵士が間違えて午前2時に、門から御所に入ってしまったのだ。決行までまだ4時間もある。

「計画が露見した!」

岩倉のもとには、そんな緊急の知らせが寄せられる。そのとき、岩倉は驚くべき行動をとった。

第8回につづく)

【参考文献】
多田好問編『岩倉公実記』(岩倉公旧蹟保存会)
宮内省先帝御事蹟取調掛編『孝明天皇紀』(平安神宮)
大久保利通著『大久保利通文書』(マツノ書店)
大久保利謙『岩倉具視』(中公新書)
佐々木克『岩倉具視 (幕末維新の個性)』(吉川弘文館)

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