「学校に行かなくていい」両親が毅然と決めた瞬間 夫婦連れだって学校訪問して見えたこと

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その後、息子が高校へ行く時期になりました。先輩お母さんたちから勉強させてもらっていたので、高卒認定など、高校へ行かなくても大学に行ける方法があることは知っていました。通信制高校など、通わなくても高卒資格を取れる方法もあるし、勉強方法もいくらでもあるなって思って、あんまり気にはしなかったです。

進路の選択肢に「何もしない」を

息子には「義務教育が終わるけど、高校はどうしますか?」と、行きたいか行きたくないかを聞きました。高校も、商業や工業などいろいろあるので、自分で選べるんだよと伝えました。息子の返事は、「そんなことは考えていないのでわかりません」でした。私は息子の意見をすんなり受けいれられました。

なぜなら、先輩お母さんたちと話していて、つねづね言い合っていたことがありました。それは中学を卒業したらそのまま高校へ行かなきゃいけないんじゃなくて、進路の1つに「何もしない」という選択肢を入れる、ということです。

――現在、息子さんは何をされているんですか?

今は愛知県をはなれて中学校の教員をしています。なかなかブラックな職場だと聞いていますが、がんばって働いているようです。

教員になるまでに息子は「自分探し」と言って大工、喫茶店、道路工事の旗振り、マグロ漁港の仲買見習い、フリースクールの手伝いなど、仕事を転々としていました。私としては不安ではありましたが、本人が納得して決めたことなら、どんな仕事をしていても自立できるだろうと信じて本人にまかせました。相談には乗りましたが、よけいなお節介をしないようにつとめました。今では家を出て10年ほどになりますが、たくましく一人暮らしでがんばっている息子には安心し、誇らしく思っています。

今は親の会を

私はというと、お母さんたちとの集まりがきっかけで、親の会の世話人をしています。参加者は若いお母さん方が大半で、昔と変わらないような悩みを抱えている方が多いように思います。

親の会をやるなかで1つ大事にしていることがあります。「子どもの成人年齢は30歳。それまでは長い研修期間」だと考えるということです。

不登校をすると学校へ行かなかったり、社会のレールからはずれる時期があると思います。なので、社会に出る成人になるのは30歳だと思えば、親の気持ちに余裕ができるんです。そもそも、私もそうだったけど、20歳のころなんて何も知らなかったですしね。

――ありがとうございました。

(聞き手・鬼頭信)

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日本で唯一の不登校専門紙です。不登校新聞の特徴は、不登校・ひきこもり本人の声が充実していることです。これまで1000人以上の、不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場しました。

また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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