豊かな人生を遠ざける「稼いだ金は自分に」の思考 何の目的もなくお金を貯めている人も要注意

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転職で給与が下がることに悩むシマオ君に対する佐藤さんの教えとは……(写真:竹井俊晴)
「何のために仕事をしているかわからない」という人、メディアにあふれる「好きを仕事に」「やりたいことで生きる」「何者かになりたい」というキラキラ思考に疲れた人、「人間関係に疲れ、会社に行きたくない」という人、「仕事が評価に繋がらない」という人、「自分の限界が見えて先が見えない」という人……。
すべての悩める働く社会人に代わって、中小企業に勤めるミレニアル世代のシマオ君が、作家・佐藤優さんに「働くために必要な哲学の教え」を聞きました。(『仕事に悩む君へ はたらく哲学』から一部を抜粋・再構成して紹介します)。
前回の記事「人間関係で「自分を嫌う人は無視」が正しい理由

 

お金はないよりあったほうがいい

シマオ:佐藤さん。実は僕の会社の業績がやばいことになっていて。周りがどんどん転職していくんです。

佐藤優(以下佐藤):大変ですね。

シマオ:能力ある人からどんどん辞めていってしまうので、焦って転職活動をしたんですけど、自分が希望した条件とまったく合わなくて。つまり、給料がかなり下がるんです。友人が自分より稼いでいると、うらやましいなあと思ってしまうし、少なからず敗北感を持ってしまうんですよね。これって何なんですかね?

佐藤:お金がないよりはあったほうがいいですからね。

シマオ:そうなんですよ。ものすごく稼ぎたいということじゃないけど、お金は欲しくて。そんなこと考えていくうちに、結局、僕にとっての「豊かな人生」って何なんだろうって思うようになったんです。

佐藤:なるほど。「豊かさ」とは何か……。「豊かさ」が何であるかを定義するのは、シマオ君の言う通り、とても難しいことです。個人によっても、社会によっても、何が豊かであるかについての感じ方は大きく異なるでしょう。資本主義社会において、お金が豊かさの尺度となるのはなぜだと思いますか?

シマオ:お金があれば何でも買うことができるからですよね。

佐藤:はい。資本主義というシステムの中では、金銭によって物質的な商品はもちろんのこと、「欲望」ですら容易に購入することができます。市場の自由化の原理においては「優しくされたい」「感動したい」「助けたい」という人間の欲望や感情を満足させるものが、商品化されていくのです。

シマオ:欲望を買う?

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