新幹線の「永遠の好敵手」、フランスTGV40年の軌跡 国際列車網に発展、最高時速574kmの記録も
路線の考え方も新幹線とは異なる。在来線とは別の新線を全線にわたって敷設した新幹線(フル規格)に対し、TGVは郊外に「高速専用線」(LGV)を造る一方、在来線に乗り入れて柔軟な運行を行い、都心のターミナル駅などは従来の施設を共用している。これが可能なのは、そもそも欧州の鉄道が高速新線も在来線も標準軌(1435mm)であるためだ。
LGVは貨物列車を運行しない高速旅客列車専用としたことで、最急勾配35‰ときつい上り坂を許容。トンネルや橋梁の建設を最小限に抑えた。最初にTGVが走った「LGV南東線」(273km)にトンネルは1カ所もない。
1981年以降、高速専用線LGVの敷設は着々と進んだ。1989年9月にはパリからフランス西部に向かう「LGV大西洋線」が部分開業、翌年にはトゥールまでの全線180kmがつながった。同線には銀色に青帯の新型車両「TGV Atlantique(アトランティーク)」を投入し、営業最高速度世界一を塗り替える時速300kmで運転を実現した。日本では同年、上越新幹線の一部区間で時速275km運転を実施したが、スピードではTGVが一歩先を行く状態が続いた。
スピード最高記録は驚異の574.8km
あくなきスピードの追求はTGVの歴史の中でも特筆すべき点の1つだろう。もともとフランスは高速化に熱心で、TGV開業前に造られたガスタービン駆動の試作車「TGV001」は1972年に時速318kmを記録。南東線の開業に先立つ1981年2月には、営業用と同じ車両で時速380kmを記録した。
その後もスピードへの挑戦は続く。大西洋線延長区間の営業運行開始前の1990年5月にはTGVアトランティークの営業用編成を改装して高速走行実験を行い、鉄車輪を使う従来式鉄道としては前人未到のスピードである時速515.3kmを記録し、世界を驚かせた。
一方、日本で営業最高速度が時速300kmに達したのは500系「のぞみ」が登場した1997年で、ここで新幹線はTGVアトランティークと並ぶ「世界最速」の座に久しぶりに返り咲いた。高速試験では1996年7月にJR東海の試験車「300X」が時速443kmを記録したが、その後の速度記録はリニアに移行している。
だが、TGVはその後もスピードへの挑戦を続け、2007年には当時開業直前のLGV東ヨーロッパ線を使用した高速試験を実施。同年4月3日には従来式鉄道として過去最高の時速574.8kmを記録した。
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