嵐の櫻井・相葉W結婚が「祝福一色」だった理由 「ジャニーズの結婚」分岐点は2000年のキムタク

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今回の報道を受けた街のファンの声に、印象的なものがあった。

それは、彼らへの深い感謝の気持ちを伝える言葉だった。嵐ファンだという2人の女性は、「本当に青春だったので、言葉が出なかった」とショックを隠さない一方で、これまで嵐にいつも元気をもらってきたことを踏まえ、「今まで幸せにしてもらったので、幸せになってもらいたい」と語っていた(『めざまし8』2021年9月29日放送)。

この言葉からは、嵐が彼らの人生をかけて多くのひとを楽しませようとし、長年自分たちを励ましてくれてきたことへの感謝の念が伝わってくる。アイドルファンのなかには「ガチ恋」という表現もあるように、恋愛的な感情がとりわけ強いファンもいるだろうが、感謝の思い、さらにはアイドルの幸福を願う気持ちが勝ることもある。

むしろそういうファンが多かったことが、今回の結婚発表に対する祝福ムードになったのではあるまいか。それだけ、アイドルは人生に寄り添ってくれるかけがえのない存在になっている。

「推し」の時代が変えたアイドル文化

いまや、人生に「推し」は欠かせない。誰かを応援することが、生活の重要な一部になっているひとは少なくない。そういった人たちにとって「推し活」(応援活動)は、一時的なものではなく人生を通じて続くものだ。

ジャニーズではないが、アイドルの結婚をめぐってSNSのある書き込みが最近話題になった。

BUMP OF CHICKENの藤原基央と元モーニング娘。のメンバー(現在は引退)が結婚していたことが報じられた。すると元メンバーのファンがツイッターで、「BUMP OF CHICKENを応援すれば間接的に彼女の生活を支えることになる」という趣旨の書き込みをし、共感の輪が広がった。半分冗談のようにも聞こえるが、そこには「推し活」の喜びのようなものがにじみ出ている。

ジャニーズファンには、自分の応援するアイドルを語る際に「担当」という表現を使う伝統がある。アイドルの名前の後に「担」をつけて、「○○担」というような言いかたをする。ただ、ジャニーズに対しても「推し」という表現が使われることが、徐々に増えてきた。

「推し」という表現には、「推薦」というニュアンスが入っている。つまり、自分だけではなく他人にもそのひとの良さをわかってもらいたいという意味合いがある。要するに、独占するのではなく共有したい、ということだ。

それは、アイドル文化のひとつの成熟だろう。疑似恋愛から応援へ。今回の結婚発表への世間の反応は、そんな時代の変化を感じさせてくれる。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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