商船三井の株主総会、53億円の追徴課税に「国税は理不尽、必ず勝ちます」と芦田社長が公言

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アフリカなど、ポストBRICs地域への取り組みについての質問に対しては、武藤専務が「中計のなかに一部取り込んでいるが、具体的な輸送につながるまでに時間がかかる」と指摘。芦田社長は、「商船三井は伝統的にアフリカに強い商権がある。5年前、南アフリカにいち早く定期船の航路を開設した。欧州と南アフリカを結ぶ航路でA.P.モラー・マースクラインから買収した航路だ。インドで生産した自動車のアフリカ向け輸送も手がけている」と補足した。

「商船三井は06年に大きな事故を起こしている。向こう3年で240億円を安全運航の強化のために投資するというがどのようなことに投資するのか」と、安全運航に関する質問も出た。船長出身の平塚惣一常務執行役員は、「105億円をソフトウェアに、ハードウェアに110億円を充てる。このほか船舶管理のIT化に20億円」と説明。芦田社長も「安全運航は一番の礎でさらに徹底していきたい」と決意を示した。

社会貢献、男女平等のサポート体制についての質問も出た。ダイバーシティ担当の青木副社長は、「男女は平等に扱っている。79人の女性総合職がいるが、14人が管理職だ。育児休職は1年から1年半取得可能で現在5人が休職中。育児休職後に職場復帰した者はほぼ100%」と説明。芦田社長は「女性総合職が課長、副部長になっている。現在では採用の3割くらいが総合職だ」と補足した。

株主還元と社外取締役について、「1株利益に対する配当性向だけではなく株主資本比で見た配当率(=DOE)の考え方を取るべきではないか」「社外取締役については、金融出身者に偏重しているのではないか。マクロに強い社外取締役は1人でいいから国際法務や国際会計の実務に強い専門家を社外取締役に入れてはどうか」「社外重役制度の形骸化を廃する意味でも検討すべきだ」という意見も出て、会場から拍手が沸いた。

芦田社長は、「いろいろな考え方があるなかでDOEの考え方もある。今後の課題としてご意見を承る。2人の社外取締役は民間企業にもいた経験があり、金融に偏しているということもない」と応じた。

今年の商船三井の株主総会の所要時間は、過去最長の125分(昨年は115分)。うち質疑応答に95分を要した。昨年より21人多い676人が集まったが、質問者は前回を5人下回る9人。逆に、質問数は昨年より2つ多い22となった。

(山田 雄一郎 =東洋経済オンライン)

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