商船三井の株主総会、53億円の追徴課税に「国税は理不尽、必ず勝ちます」と芦田社長が公言
客船事業に関する質問と、それに関連して、株主に向けた見学会をしてはどうか、という提案もあった。担当の山本竹彦専務(その後に退任し現在はダイビル副社長)は、「クルーズ事業は1990年に開始したが、以後20年間クルーズ人口は増えていない。現在では20万人を切る水準だが、1人当たりの国民所得からして100万人あってもおかしくないのに、伸びる兆候は見えていない。前期は4カ月のドック入りがあったので除外するとしても、前々期は売上高が50億円を切り、4億円の経常赤字だった。黒字のときもあったが、過去20年間では負け越している(=赤字の期が多い)難しい事業だ」と回答。「見学会の時間をとるのは難しいが、横浜・名古屋・神戸で改装した『にっぽん丸』の内覧会をしたところ、6600人もの希望者が集まった。まずは改装したにっぽん丸を成功させることが最優先課題」とした。
負債が多いことを指摘し、「中期30%目標としている配当性向を今期から30%にしていただきたい」という要望もあった。米谷副社長(現在は退任し顧問)は「営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合計したフリーキャッシュフローは400億円のマイナスで、これを社債等で調達している。3年後には営業キャッシュフローが投資キャッシュフローを上回り、有利子負債を株主持分で割ったギアリングレシオは1以下に抑えたい。商船三井は名だたる企業の中でも先端的なキャッシュフロー経営をやっている。自己資本比率は3割強だが、世界的には4割~5割の海外船社もあり、国際的に戦うにはまだ不十分。いつしか配当性向を30%に持って行きたいが、もうしばらくお待ちいただきたい」と株主に理解を求めた。
芦田社長は「借金が少ないほうがいいのはその通り。社長在任中の6年間に1兆円の経常利益を合計で稼ぎ、計4000億円を税金として納め、計1400億円を配当した。財務力がついた結果、増資しないとカネを貸さないとは銀行に1回も言われたことがなく、大変ありがたく思っている。もうしばらく財務体質の強化を続けさせていただきたい」と補足説明した。
燃料油高騰への対応策についての質問も出た。武藤光一専務(現在は社長、以下同)は、「重油の代わりにLNGを使うとか、太陽光を使うとかの案が出ているが、太陽光は2~3%のエネルギー、居住区電力をまかなえればというくらい。LNGは重油と並行的に値段が上がってしまうなど抜本対策はない。二酸化炭素の排出量削減という意味で、省エネ船の開発を進めていきたい」と説明。芦田社長は「現存する船の切り替えは難しい。既存船では減速航海をしている。スピードを1割落とすと2割の燃料油の節約になる。すでに発表済みの『船舶維新』は、まだコンセプトの段階とはいえ現存技術の応用のみで達成できるエコシップだ」と補足した。