双子パンダ「5組」も育てた和歌山の施設の凄み 17頭がアドベンチャーワールドで生まれ育った

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

当時、世界のパンダ飼育では、双子が生まれたら入れ替え保育を採用するのが一般的になっていた。2頭を同時に育てるのは異例だ。アドベンチャーワールドのスタッフが中国側に相談すると、中国側は2頭の同時飼育を了承。隆浜も秋浜も元気に育った。

成功の理由は、①梅梅の育児能力の高さと泌乳量の多さ、②双子の体重差(1日齢で160gと106g)の小ささ――にあるとアドベンチャーワールドは分析している。双子の体重差が大きいと、重いほうの赤ちゃんが母乳を独占してしまう可能性がある。同園によると、母親が双子パンダを同時に育てたのは世界初だ。

梅梅は、この双子を生む前に中国で出産していたうえ、アドベンチャーワールドでも2000年9月と2001年12月に1頭ずつ生んでいた。こうした経験も影響したのか、梅梅は慣れた素振りで隆浜と秋浜を上手に世話した。まだ目が見えない双子が母乳をせがむと、乳房まで押し上げて飲ませたり、自力で排泄できない双子のお尻を舐めて、排泄を手伝ってあげたりした。

梅梅が双子を同時に抱いても見分けやすいように、スタッフは、隆浜に無害な染料で紫色のしるしを付けた。ちなみに上野動物園も2021年6月23日に生まれた双子のうちの1頭(後に雄と判明)にしるしを付けていて、こちらは緑色だった。色は、ほどなく消えた。

双子の1頭が命を落としたことも

次に梅梅が双子を生んだのは2005年8月23日。雄の幸浜(こうひん)が生まれた。だが、もう1頭の赤ちゃんは体重が66gしかなく、翌日死亡した。出生時のパンダの平均体重は100~200gで、100gを下回ると命を落とす危険が高まる。

フランス・ボーバル動物園で2017年8月4日に生まれた双子のうちの1頭も、生後間もなくこの世を去った。もう1頭の雄のユアンモン(圓夢)は元気に育っている。

梅梅は、幸浜を生んだ翌年の2006年12月23日にも双子を生んだ。この双子は体重差が大きかった。姉の愛浜(あいひん)の196gに対し、弟の明浜(めいひん)は84gしかない。梅梅が双子を一緒に育てた場合、明浜が母乳にありつけない可能性も考えられ、入れ替え保育を採用した。

一方で、明浜は体重が100gを下回っていたため、良浜に長時間抱かれていると、体温が下がって命に関わる。そのため保育器に入れる時間もある程度、長くする必要があった。

入れ替え保育をして育った愛浜と明浜。2009年12月23日撮影(写真:アドベンチャーワールド提供)

入れ替え保育の場合、スタッフが24時間体制になる。アドベンチャーワールドでは、それ以外の時でも宿直として1人は常駐していることが多かったが、入れ替え保育がスタートすると、夜間に2人いる体制が半年ほど続いた。

入れ替え保育で気になるのが、母子3頭を一緒にした時だ。母親は1頭だけ育てていたつもりかもしれない。2頭の子が出現して、戸惑ったり嫌がったりしないのだろうか。母子3頭が初めて一緒になった日齢は、0~88日齢と幅がある(1ページ目の表参照)。なお、この日齢は、抱く練習などで初めて一緒になったタイミングであり、この日齢以降、必ずしもずっと一緒にいたわけではない。ひと月に1回など、頻度が少ない場合もある。

愛浜と明浜の場合は、32日齢で母子3頭が一緒になった。すると梅梅は2頭とも抱きかかえ、すぐに授乳した。

次ページこぼれ落ちた赤ちゃんを足でキャッチ
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事