双子パンダ「5組」も育てた和歌山の施設の凄み 17頭がアドベンチャーワールドで生まれ育った

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梅梅がアドベンチャーワールドで生み育てた7頭のうち、良浜を除く6頭の父親は永明(えいめい)だ。梅梅は2008年10月15日に息を引き取った。すると、良浜が永明の新たなパートナーになった。良浜は、永明の義理の娘に当たる。梅梅は、中国でほかの雄との人工授精を受け、良浜を妊娠した状態で来日し、2000年9月6日に良浜をアドベンチャーワールドで生んだ。

良浜が初めて生んだ子どもは双子だった。2008年9月13日生まれの雌の梅浜(めいひん)と雄の永浜(えいひん)だ。母子3頭が一緒になったのは88日齢の時。スタッフによると「初めての出産ということで、ぎこちない感じでした。うまく抱けずに、良浜自身も戸惑っていたような気がします」とのことだ。

永浜と梅浜。2012年9月9日撮影(写真:アドベンチャーワールド提供)

次の出産は2010年8月11日で、またもや双子。雄の海浜(かいひん)と雌の陽浜(ようひん)と名付けられた。母子3頭が一緒になった時は、良浜が2頭を抱きながら陽浜を舐めていたら、腕から海浜がこぼれ落ちた。すると良浜が海浜を後ろ足でキャッチしたという、微笑ましいエピソードもある。

良浜は2012年8月10日にも双子を生んだが、1頭は死産だった。もう1頭の雌の優浜(ゆうひん)は、すくすく育った。

親離れしても双子なら一緒に遊べる

パンダは単独で生きる動物なので、飼育下でも子どもがおよそ1歳で母親と離れ、ひとり立ちする。

双子の梅浜と永浜は、わずか177日齢で親離れした。良浜が初産で、双子を上手に育てるのが難しかったためだ。飼育スタッフの品川友花さんは「梅浜と永浜は、良浜と一緒にいる時間が短かったので、運動できるように、やや大がかりな遊具を置いたり、いろいろな動きができる遊具を検討したりしました」と話す。

海浜と陽浜は426日齢で親離れした時、初めは良浜を探して、扉の前で良浜が来るのをじっと待っていた。でも翌日、新しい遊具をプレゼントされると、2頭で一緒に遊んだ。

海浜と陽浜。2014年8月11日撮影(写真:アドベンチャーワールド提供)

良浜が2014年12月2日に生んだ双子の雌の桜浜(おうひん)と桃浜(とうひん)は、338日齢で親離れした。この双子は親離れと同時に、「ブリーディングセンター」というパンダ舎から「パンダラブ」というパンダ舎へ引っ越した。園内には、この2カ所のパンダ舎がある。

パンダラブに来た直後の桜浜と桃浜は、匂いをかいで歩き回ったものの、1時間もすれば落ち着いた。ミルクは綺麗に飲み干し、スタッフが退出したら2頭ともすぐ寝た。翌日から公開がスタートしても、落ち着いていた。

双子なら、親離れしても、しばらく一緒の部屋で過ごせるので、寂しさを紛らわすことができる可能性がある。その点、双子ではなく1頭で生まれた子どもは、親離れすると、スタッフしか遊び相手がいない。さらに成長すると、スタッフも一緒の部屋に入れなくなる。体が大きくなれば力が強くなり、スタッフがケガをする恐れがあるためだ。パンダはかわいく見えても、鋭い爪や牙がある。

良浜が2016年9月18日に生んだ結浜は、1頭で生まれたうえ、良浜によく甘えていた。一般的に、雄に比べると雌のパンダはあまり甘えないので、結浜は珍しい。こうしたことから、結浜が親離れしても寂しくないように、スタッフは遊具を多めに与えたり、一緒に遊んであげたりした。

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