双子パンダ「5組」も育てた和歌山の施設の凄み 17頭がアドベンチャーワールドで生まれ育った

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母親と別れた後は、双子同士の別れの時が訪れる。成長すると縄張り意識が生まれ、相手が肉親でも攻撃して、危害を加える恐れがあるためだ。

アドベンチャーワールドによると、双子が離れ離れになる時は、いきなり別々の部屋で暮らすわけではない。初めは夜だけ、あるいは、バックヤード(展示場の裏側)で1頭のパンダにおやつをあげられる有料の「パンダラブツアー」(現在は感染対策でオンライン開催)の時間だけ、などと徐々に離していくことが多い。そのため「離れ離れになっても、特にお互い気にせず過ごしていることがほとんどです」(品川さん)。

アドベンチャーワールドの双子が別れた時期はさまざまだ(1ページ目の表参照)。

生まれた時からずっと一緒だった隆浜と秋浜は、2007年10月に4歳で中国へ行くまで一緒に過ごした。2008年に公開され、女優の菅野美穂さんがナレーターを務めた映画「パンダフルライフ」には、アドベンチャーワールドから中国・四川省にある成都大熊猫繁育研究基地に到着しても一緒にいた様子が映っている。

隆浜と秋浜は、成都での最初の3カ月間を検疫施設で一緒に過ごした後、広い運動場に移った。だが、おとなしかった隆浜が秋浜に吠えたり噛みついたりするようになった。

やがてケンカが激しくなり、屋外と屋内に分かれて暮らすように。秋浜はその後、3頭の雌との間で計4頭の子をもうけ(2019年11月時点)、現在は中国・深圳野生動物園で暮らしている。

じゃれあっていた桜浜と桃浜

海浜と陽浜の場合は、陽浜が体調を崩した際に、そのまま別れた。

今もアドベンチャーワールドにいる桜浜と桃浜は、幼い頃から、並んで座って竹を食べたり、同じポーズをとったり、じゃれあったりと、仲睦まじい姿を見せていた。

桜浜と桃浜(2016年2月7日筆者撮影)

桜浜と桃浜は、完全に別れる前に短期間、別々のパンダ舎で暮らしたことがある。桃浜がブリーディングセンターに移動したのがきっかけだった。なぜ移動したかというと、兄姉に当たる海浜、陽浜、優浜の3頭が2017年6月に中国へ旅立つ前、パンダラブで検疫することになり、手狭になったためだ。

桃浜はその後、パンダラブに戻り、桜浜と時々同居して、1263日齢(2018年5月)で別れた。別れたといっても、パンダラブの屋内で公開中は、透明の柵で仕切られた隣り合わせの運動場で過ごしていることも多い。

現在は、永明、良浜、結浜と、2020年11月22日に生まれた楓浜の4頭がブリーディングセンターで暮らし、桜浜と桃浜、2018年8月14日に生まれた雌の彩浜(さいひん)の3姉妹がパンダラブで暮らしている。

良浜と双子の3頭を一緒にするまでの期間は、良浜が出産経験を重ねるにつれ、短くなる傾向にある(1ページ目の表参照)。桜浜と桃浜の場合は、わずか20日齢で母子3頭が一緒になった。

双子が一緒に登場した時の良浜の様子について、飼育スタッフの吉田倫子さんはこう話す。

「2回生んだことは、分かっていると思うのですが、入れ替え保育の間は1頭しか抱いていないので、双子がいるのだとあまり理解していないかもしれません。双子を一緒に良浜に返した瞬間、良浜は目を丸くして、『え?』『双子を生んだけど1頭しかいないので、1頭かなと思っていたら双子だった』という反応を見せます。でも何事もなかったように抱いたり舐めたりして、子育てしました」

上野動物園で生まれた双子パンダは今日9月29日に98日齢となった。母親のシンシン(真真)と3頭一緒に過ごす日がいずれ訪れるだろう。2021年は、上野動物園と中国各地のほか、フランスのボーバル動物園で8月2日、スペインのマドリード動物園で9月6日に双子のパンダが生まれている。双子パンダならではの育ち方に着目してみるのも、パンダをより深く知ることができておすすめだ。

中川 美帆 パンダジャーナリスト

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なかがわ みほ / Miho Nakagawa

福岡県生まれ、早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)

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