エアロゾルは重力によって落下していくが、その速さはかなりゆっくりだ。柳さんによると、5ミクロンのエアロゾルを、人が立っているときの口や鼻の高さである1.5メートルから落下させると、気流がまったくない状況でも35分間かかるという。
「エアロゾルの落下は温度や湿度、気流などにも大きく影響され、気流があればそれにのってどこまでも運ばれます。つまりエアロゾル感染=空気感染なのです」
では、どんな空気感染対策をとればいいのだろうか。本堂さんは言う。
「ポイントは、“空気の溜まり場を作らない”です。そのためには適切な換気が大事で、必要に応じて補助的に空気清浄機を活用します」
2つの「空気感染対策」が必要だ
では、2人に聞いた空気感染対策を紹介しよう。
厚生労働省も新型コロナ対策として、換気を呼びかけている。ただ、日ごとに気温が下がってくるこれからの季節、窓を全開にして換気するのは、現実的ではない。寒さを我慢して風邪を引いてしまうようでは、元も子もないだろう。
とはいえ、本堂さん、柳さんがすすめるのは、ずっと窓を開け続ける「常時換気」だ。30分に1回、窓を開けるなどのいわゆる「こまめな換気」は×。なぜなら、窓を閉めている間は気流が生まれず、空気のたまり場ができてしまうからだ。柳さんが言う。
「例えば、30分に1回、換気をしていたとしましょう。そこに感染者がいて、くしゃみをした場合、ウイルス入りのエアロゾルは30分以上、室内にとどまっていることになります。その空気を同じ部屋にいるほかの人が吸い込めば、当然ながら感染リスクは高まります」
寒い季節でも可能な常時換気のポイントとして、柳さんは「開けるのは必要な窓だけにとどめ、こぶし1つ分だけ開ける」ことをすすめる。
「このときに意識したいのは“空気の通り道”です。空気が部屋をくまなく流れるためには、対面の窓を1カ所ずつ開けるのが望ましい。開ける幅は5~10センチで十分です」
なぜ1カ所の窓開けではダメかというと、それでは空気の出入り口ができないからだ。開けている窓の周辺は換気ができても、部屋の奥には新鮮な空気が届かず、空気のたまり場ができてしまう。よって、換気の意味をなさないというわけだ。
この常時換気をサポートするのが、マンションやアパートなどでは各部屋についている丸や四角の換気口(通気口)。ここはつねに開けておくことで、換気の効果が高まるという。
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