マイホームを持たない中国人は敗北者 中国不動産バブルの勝ち組、負け組(前編)

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――ただ、中国の住宅はクオリティが悪く、補修にまたおカネがかかるという話も聞く。

そう。実際、北京の多くのマンションで問題が生じている。しかも入居前の新築でも問題が出たりする。完成したばかりの団地で、漏水などのトラブルが続いて、住人たちが騒ぎを起こしたという話がニュースになったこともあった。管理会社の管理も悪くて、よく問題になる。だから家を買って財産ができても、そういう不愉快なこともいろいろある。そう考えると、ちょっと気持ちが落ち着くわね。

あと、ローンを組んだら簡単に転職できなくなる。なぜなら毎月ローンを必ず返さないといけないから。1カ月仕事がないだけで、たちまち首が回らなくなる。その点、借家住まいの私は、好きな仕事を選べるし、好きなことをやる自由もある。

でも長期的には「この人は敗北者だ」と思われることに耐えなくちゃいけない。なぜなら私にはマイホームがないから! 中国人は家を持っているか、車を持っているか、この2つだけで人を判断する。私はどちらも持っていない。そうしたらお話にならないというふうになる。相手の目線からそれを感じる。

こんな話、気の知れた友達にしかできない。初対面の人には、家があるふりをする。借りている家だということは絶対言えない。そんな平然とはしていられないわ。

自分はよくても他人の目が・・・

――中国人がそこまで家にこだわるのは、過去の歴史と関係があるのか?

それはそうかもしれない。かつて家は仕事場から支給されるものだった。それも簡単にはもらえなかったし、ようやくもらえてもすごく小さくて、個人の空間もないようなところで、ゆっくりすることもできなかった。

だからみな貧乏から突然解放されて、まず追求したのがマイホームだった。中国人にとって、家はまるでその人が心の中で追い求めていたたくさんのものを内包しているみたい。

――なら、あなたはそれを超越したと考えればよいのでは?

問題は、他人はそう思わないってことよ! もし私の周辺がみんなあなたみたいな考えだったら、気が楽なる。あなただって借家だし、私もそう。仮にあなたが家を買ったとしても、私が借家だからって、自分より生活レベルが低いとは思わないでしょう。マイホームがあろうがなかろうが関係なく、どちらもちゃんと仕事して同じように生活している。プレッシャーは感じない。

でも中国ではそれができない。うっかり超越なんかしたら、この国では結局、負け犬にならざるをえないのよ。

田中 奈美 ルポライター

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たなか なみ

東京都生まれ。2003年より北京に留学。中国の社会生活やビジネスに関するルポを各紙誌に発表。著書に『北京陳情村』(第15回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作)『中国で儲ける―大陸で稼ぐ日本人起業家たちに学べ』(新潮社)がある

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