アメリカ政府に「最も都合のいい」次期総裁は誰か

必ずしも河野氏がベストというわけでもない

「基本的な見解としては、安定していて欲しい、というところだろう」とジョージワシントン大学の日本専門家であるマイク・モチヅキ教授は言う。

「誰が首相かという点では安定しないかもしれないが、システムとしては安定している。首相が次々と入れ替わる時代が再び訪れるのか。そしてそれが同盟関係を展開していく上で問題になるか。バイデン政権は問題だとは思っていない。基本的には同じ層が運営するのだから」

日本に対するこうした見方が、菅首相の後任が誰になるのか、ということへのアメリカ政府の無関心さにつながっている。「自民党はどこへも行かないという安心感がある」と、安倍晋三元首相初の英語での伝記の著者であるハリス氏は言う。「日本に関しては心配無用」との信念があるのだ。

しかしハリス氏は、過信は禁物だとし、野党連合からのみならず、安倍氏が支持する高市早苗氏の周辺に動員された党内の過激分子からの挑戦の可能性をも指摘する。「日本の根本的な安定への疑問について、軽視すべきではない」と、同氏は警告する。

河野氏を特に好む空気はない

自民党内で候補者が出そろった今、アメリカ政府にとって「都合のいい」の人物はいるのだろうか。あるいは少なくとも、日本専門家たちの小さなコミュニティーの中ではどうなのか。主要候補の2人についてはよく知られている。いずれも外務相を務めたことのある岸田文雄氏と河野太郎氏だ。アメリカ政策立案者は、その人気と英語力から、河野氏が首相になることを好むだろうとの憶測がある。しかし、そうとも言えないようだ。

「河野氏のほうを特に好む空気は感じられない」と、オバマ政権時代に防衛上級顧問を務め、シンクタンク「カーネギー国際平和財団」からワシントンの「笹川平和財団」に移籍したばかりのジェームズ・ショフ氏は話す。

「基本的にアメリカの政策立案者は、岸田氏でも河野氏でも構わないと思っている。一番の関心事は、政権の強さと継続力だ。菅氏が出馬を見送った際には、勢いが失われる懸念と、日本の政治はどこに向かうのかという不安とで、全体に軽くため息が漏れた」

安倍氏が、基本的経済政策の領域においても外交政策においても、現在確固たるものとなっている青写真を確立させ、アメリカとの同盟関係や、ヨーロッパとの関係改善、中国を戦略的ライバルと見る幅広いコンセンサスなどを固定化させたのだと考えられている。「どの候補者もそこから逸脱してはいない」とハリス氏は述べる。違いは、「そのやり方と実行力」の問題だという。

その中の例外が高市氏で、同氏は戦没者を祀った靖国神社への参拝を公約に掲げるなど、戦時中の歴史について強硬な見解を示しており、これは日米韓の三国同盟を修復しようとするアメリカ政府の希望を実質的に打ち砕くことにもなる。高市氏が首相に就くことは、「中国にとって都合のよいプロパガンダとなり……日本はアメリカにとって、一緒にやりにくい同盟国になる」(ハリス氏)。

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