「アメリカのバブル崩壊が始まった」は本当か 1月末の株価急落は何を意味しているのか

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手数料無料も売りにしつつ取引を拡大するアメリカの新興証券ロビンフッド社。今回のゲームストップ株をきっかけとする株価の波乱はバブル崩壊の予兆なのだろうか(写真:AP/アフロ)

アメリカの株式市場は、年明け以降も最高値更新が続いていたが1月末に一時急落した。S&P500指数の月次リターンは若干のマイナスとなり、年初以降の株高がすべて失われたことになる。

多くの市場参加者にとって予想外の出来事だった。一部の機関投資家は小型株の売りポジションを持っていたが、これらの小型株が急騰したことで彼らが損失を被るいわゆるショートスクーズに直面したのである。これが明らかになり、機関投資家が保有する株式資産を広範囲に売却せざるを得ないとの思惑が、アメリカ株式市場全体に波及したとみられる。

割高な個別銘柄の下落を予想してリターンを得る戦略を得意にする、機動的な機関投資家はアメリカではごく普通の存在である。そして、本来の企業価値と比較して、現在の株価が割高でかつ値動きが大きい小型株が「空売り」の対象になり易い。

こうした一部プロ投資家の戦略に抗い、多くの個人投資家が代表的な小型株について、オプション取引を使い買い上げたことで株価が急騰した。そして、プロの戦略を逆手に取る投資行動に多くの個人投資家を誘導したのは、レディットなどのSNSだと報じられている。

日本なら考えられないことがアメリカで起きている

どうやら「プロ投資家を打ち負かす」と熱狂する個人投資家が、いくつかの小型株を買い上げて、短期的には一部の機関投資家に損失をもたらすことに成功したとみられる。今の日本では考えられないが、アメリカでは株式市場の裾野が広がり、個人投資家の売買行動が大きな影響をおよぼすほどに、株式市場の需給構造が変わっていることを意味する。

今回の混乱の過程で、革新的なスマホアプリそして手数料体系によって、株式市場への個人投資家参入を加速させた新興証券会社(ロビンフッド社)は、株価の急騰を受けてそれらの銘柄の売買を制限した。

膨れ上がる個人投資家経由のオプション取引のリスクを、証券会社が引き受ける財務リスクが高まり、また個人投資家の取引急増によって取引システムに障害が起きた。

証券会社には、市場取引機能を安定して提供する役割があり、そのために株式市場の過度な価格変動そして取引を抑制する行為は許容される。ただ、新興証券会社と機関投資家が収益面で共存関係にあり、そうした中で真偽不明な噂が流れて、混乱が複雑化する様相をみせたことが、株式市場の心理を冷やしたと見られる。

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