アメリカ政府に「最も都合のいい」次期総裁は誰か 必ずしも河野氏がベストというわけでもない
高市氏が当選する見込みは薄いとされるものの、河野氏と強硬右派である同氏との決選投票にでもなれば、安倍氏や麻生太郎氏といった主流派閥のリーダーたちが結束して高市氏に付くのではないかとの懸念もある。
広く訴求力をもつ河野氏とは異なり、そのような強硬派を党首に据えた自民党では、予定されている衆院選や参院選で深刻な敗北を招く恐れがある。「もしも高市氏が当選すれば、困ったことになる」とショフ氏は語る。
安倍氏が高市氏を支持する「思惑」
アメリカの専門家たちには、安倍氏がなぜ高市氏を支持するのかが不明だ。一部には、安倍氏に対する高市氏の個人的忠誠への見返りであり、また、誰であろうとも首相になる人物の背後で自らを影の勢力に据えようとする試みだとの見方もある。
さらに問題なのは、これは、安倍氏自身の思想的見地を反映しているのではないかと感じられることだ。自身が首相であったときには、政治的な理由や、アメリカからの圧力もあり、隠したり諦めたりせざるを得なかった見解だ。
「ふたりの安倍氏が存在する」とモチヅキ教授はいう。「実際主義の安倍氏と、観念論的な安倍氏だ。政権を降りた今は、観念論的な安倍氏が語っている。これが、一連の成り行きの中の厄介な問題となっている」。
安倍は、菅首相が憲法改正を推し進めることに失敗し、北朝鮮や中国の基地への報復攻撃を実行する政策を採用することに及び腰であった点を不服としていた。高市氏は立候補に当たり、この2つの政策の実行をあえて公約に掲げた。岸田氏も、保守派へのアピールを試みてはいるが、「安倍氏は、岸田氏がこれをやり遂げるだろうとは信用していない」とモチヅキ教授は考える。
アメリカの政策立案者にとっては、明らかに高市氏が総裁となった場合の自民党が最も厄介ではある一方で、ある意味、河野氏が最大の挑戦者となる可能性がある。
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