中2男子が550万課金「ゲーム依存」苦しい胸のうち 学業や仕事、日常生活に支障が出てくる人も

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「不登校の息子が、ゲームにはまりすぎて執着心がすごい。課金も止まらない。なんとかできないでしょうか」

最終的に両親は自分たちでは息子の行動をどうすることもできなくなり、困り果てて佐野さんに相談したのだという。佐野さんが相談を受けた時点で、息子がゲームにつぎこんだお金は、550万円にのぼっていた。

子ども自身も罪悪感を抱いている

佐野さんによると、親がゲーム依存の子どもから端末を取り上げる、ゲームができないようにとWi-Fiを切ってしまうなどはよくある対応だという。愛子さんも、息子をゲーム依存から脱却させるために、ネットに制限をかけようとした。しかし、そうした親の行動は逆効果になることが多いという。

「ゲームに対する執着をいっそう強くしてしまうだけ。自分の心の拠り所であるゲームを取り上げられた子どもは、強く反発し、逆上します。家庭内暴力に発展するケースも少なくありません」(佐野さん)

大事なのは、規則正しい生活、日常の生活サイクルと食事を正常に戻すこと。そのためには、生活のルーティンを決めて、継続することだという。

「昼間は頭や体をしっかり動かし、夜はたっぷり睡眠をとる。それだけで、本来のその子のいきいきとした姿がよみがえってくるのです」(同)

佐野さんによると、ゲーム依存の状態に陥った子どもの心の中にあるのは、決して「ゲームをやりたい」という気持ちだけではないそうだ。

「子どもたち自身も『このままではダメだ』と思っています。親からお金を巻き上げたり暴力をふるったりする子どもでも、罪悪感は必ず持っている。まるで、『鬼滅の刃』の鬼になりきれない禰豆子のようです。たとえば、僕が訪問すると迷惑そうな顔はするけれど、接しているとどこか『きっかけ待ちだったんだな』とも感じます」

現在愛子さんの息子は、佐野さんが塾長を務める全寮制のフリースクールで、集団生活を送りながら更生を目指している。寮では35名の子どもたちが寝食を共にし、勉強や運動、ボランティアなどの活動を行う。

「生活習慣が乱れてゲーム依存になっただけなら、修正はそれほど難しくありません。学校と親が連携を取って、早い段階でアプローチをすることが必要です。その子のことを本気で考えてくれる大人が『きっかけ』を与え、規則正しい生活を『継続』することで子どもは必ず変わることができます」

(取材・文/臼井美伸)

佐野英誠(さの・ひでのぶ)/1977年大阪府出身。全国フリースクール 伊藤幸弘塾 塾長。教育カウンセラー、不登校カウンセラー、保護者カウンセラー。不登校、引きこもり、ゲーム依存、スマホ依存、ネット依存の子どもたちを、365日24時間体制の寮で生活させることで自立(自律)を支援。家族関係の再構築をサポートしている。
著書『ゲーム依存から子どもを取り戻す』(育鵬社) 
臼井美伸(うすい・みのぶ)/1965年長崎県佐世保市出身。津田塾大学英文学科卒業。出版社にて生活情報誌の編集を経験したのち、独立。実用書の編集や執筆を手掛けるかたわら、ライフワークとして、家族関係や女性の生き方についての取材を続けている。佐賀県鳥栖市在住。http://40s-style-magazine.com
著書『「大人の引きこもり」見えない子どもと暮らす母親たち』(育鵬社)
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