産業リサーチ(半導体) 日立・三菱合弁と東芝が首位争いへ
1980年代後半にDRAM(PC向けを中心とするメモリ)で世界をリードした日本の半導体メーカー。だが1990年代に入ると、米国勢の巻き返しと韓国、台湾勢の台頭に挟撃され凋落の一途をたどった。世界の半導体市場が前年比32%減と史上最大の減少となった2001年には、軒並み過去最大の赤字を計上(2002年3月期)。2002年には最悪期を脱したが、危機感をバネに、各社は提携や事業統合などの合従連衡に動いた。
口火を切ったのが、日立製作所と三菱電機の半導体事業統合だ。日立はすでに、1999年末にNECと折半出資で設立したエルピーダメモリにDRAMを移管していたが、複数の機能を1つのチップに搭載したシステムLSIなど、残る半導体の大半も三菱との合弁新会社に移す。2003年4月には、日立が55%、三菱が45%を出資して、新会社ルネサス・テクノロジを設立。システムLSIの一種であるマイコンを軸に、初年度売り上げは約9000億円を計画、国内トップの東芝とほぼ並び、米インテル、韓国サムスン電子に次ぐ世界3位クラスに浮上する。
これに対し東芝は、2002年6月、システムLSIの共同開発等で、富士通と提携した。両社は事業統合も視野に入れた交渉を続けたが、富士通が事実上吸収されることに抵抗したとされ、現状では一部の協力にとどまっている。事業統合すれば国内ではダントツの規模になるが、その可能性は低い。NECは昨年11月、半導体事業を全額出資子会社として分社化。単独で生きる道を選んだ。
注目はエルピーダの動向だ。すでに富士通と東芝はDRAMから撤退、3月には、三菱がDRAMの営業権をエルピーダに売却するため、同社が国内では唯一のDRAMメーカーとなる。ただ世界シェアは下位に甘んじ、大幅赤字が続いている。2003年6月にインテル、両親会社からを中心に総額1000億円以上の調達を行うことを発表した。これを原資に生産力を現在の5倍増に増やす。
またルネサスは、融合に手間取るようだと利益拡大は難しい。となると、デジタルカメラ等向けのフラッシュメモリや、デジタル家電用のシステムLSIといった期待できる製品を多く持つ東芝が、しばらくは業界をリードしていこう。
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら