イノベーションの基礎となる「MVP」とは? 最初の小さな製品が、その後の進化を決める

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アーリーアダプターとは、新しい技術や製品をいち早く使うことが一番の関心事である人達。それは企業にも当てはまる。他社がまだ利用していない製品やサービスを、リスクを取ってでも採用し、競争力を強化したいと考えている企業だ。逆に完成度が高い製品やサービスは誰にでも使えてしまうので、それを使っても差別化要素にはならない、と考える。

MVPの参考例をみていこう。まずはアップルの例。新商品を大量に買ってもらいたい場合であっても、まずはアーリーアダプターに買ってもらう必要がある。その人たちは80%の完成度でもいいと思う人たちである。初代のiPhoneは、コピー&ペーストも、3Gのインターネットも、企業の電子メールも使えなかったが、アップルストアに行列した人達は、まさに、アーリーアダプターと呼ばれる人達だった。

グーグルの初期は、スタンフォード大学やコンピュータの専門的な話題しか検索できなかった。 世界の情報を整理できるようになるまでに、数年掛かった。今日のグーグルをみて、検索エンジンだけの会社と思っている人は少ないだろう。

無名の時のドロップボックスは、コンセプトを説明しても、投資家にはなかなか理解されなかった。しかし、何年も掛けて開発した挙げ句、誰も欲しがらない製品だったと分かるような失敗は避けなければならない。そこで短い動画を作成した。3分ほどのシンプルなものだが、分かる人には分かる小さい冗談が満載で、どういう機能とメリットを提供するかを説明した動画だった。その動画に数十万人の人がアクセスして、一晩でベータ版の予約が7万5000人にもなった。

まずは人力で顧客の要望に応じる

MVPが必要なのは、テクノロジー企業ばかりではない。アードバークというサービスは、グーグルなどがうまく対応できない質問に答えられる検索を考案した。グーグルは、世界一高い山は何か、23代大統領は誰か、という事実に関する質問には、素晴らしい性能を発揮する。しかし、主観的な質問、例えば、「野球を見た後に今からちょっと飲みに行く店はどこがいい?」 といった質問には、人間なら割と簡単に答えるが、システムではまだ難しい。これは顧客の質問に答えるバーチャルな個人秘書である。

どういう機能が必要なのかは分からないので、まずは非常に簡単な技術を使ったプロトタイプを作り、実際には、その後ろで人が対応した。実験と開発を繰り返した結果、顧客がSNSに繋げて、質問に関係しそうな友人たちに質問を投げかけて、答えを送るようにした。次第に処理は、人間と人工知能との交差点を求める、かなり高度なものになり、今後の開発方針も整理された。結果、アードバークは、グーグルに50億円ほどで買収されている。

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