イノベーションの基礎となる「MVP」とは? 最初の小さな製品が、その後の進化を決める

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フードオンザテーブルという会社も、夕食のレシピと食材を配達するサービスだが、初期のサービス開発は、創業者が、毎日一人の主婦と会い、どこのスーパーで何を買うかを聞き、そのスーパーの食品の価格や品質、セールの情報まで調べて対応した。これを、全米に広げるサービスになるまでに数年を要したが、初期の段階ではほとんどITを使わず、顧客にとっての価値、機能などの徹底検証を繰り返したことがベースになった。当時もらっていたおカネは、週に9.99ドルだった。

IMVUという会社は、3Dのアバターとチャットやメッセンジャーの機能を提供している。初期のアバターは、他のサービスのようにスムーズに動かないため動かないように固定した。そうしたところ、初期ユーザーから強い批判が起きた。そこで、単純な方法で、ユーザーが置きたい場所に、アバターを置けるように機能を改善したところ、まるでワープできるような体感を与え、高く評価されるようになった。

アジャイル(俊敏性)が武器になる

前段で、現在は不確実な時代で、新規事業の企画において、予測も計画も非常に難しい時代だと書いたが、これは何もマイナスなわけではない。今は、変化のスピードが速いというより、変化が目まぐるしいということ。 そこでは、大企業の資本力や体力よりも、ベンチャー企業の身軽さ、アジャイル(俊敏)な動きが有利に働く可能性があるということだ。航空母艦ではなく、魚雷艇のようなものだ。

予測の精度を向上させるのではなく、MVPとアーリーアダプターによって、仮説と検証を繰り返し、顧客が満足するサービスを、俊敏に生みだしていく。一旦、顧客になった人を引き留めるには、とにかく俊敏さが必要である。これこそが、新しいビジネスを成功させる重要なプロセスなのである。

宇陀 栄次 米セールスフォース・ドットコムEVP(上席副社長)

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うだ えいじ

1956年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、日本IBMに入社し、営業部長、社長補佐、製品事業部長、理事情報サービス産業事業部長、IBM AP Directorなどを歴任。2001年4月ソフトバンク・コマースの代表取締役社長を経て、2004年3月に米国セールスフォース・ドットコムの上級副社長に就任。同年4月よりセールスフォース・ドットコム日本法人の社長も兼務し、2014年4月より同社の取締役 相談役に就任。米国 salesforce.com Executive Vice President。

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