次期総理に伝えたい「世界標準の財政政策」の正解 ケチにも浪費にもならない「賢い投資」が常識
一方、人口が減少している日本では、ものやサービスを買ってくれる消費者が減っています。
2018年の段階で、空き家の数は849万戸に激増しています。スキーをする人はピーク時から激減してしまいましたが、スキー場はそれほど減っていないので、稼働率が大きく低下しています。
食生活が変化しないと仮定しても、国内では米を食べる人間の数が減るので、米の需要は減ります。お酒を飲む人も激減します。
新車の需要も減ります。学校の数も同様です。必要とされるオフィスの面積も減ります。労働者に与えるPCや機械などの需要も減少します。
要するに、日本では人口が大きく減少することによって、需要の構造が変化しているのです。このままでは慢性的に需要は減少します。その結果、供給が過剰になり、適正レベルまで調整される間はデフレ圧力がかかり続けるのです。
このように人口動態も経済に大きな影響を与えるので、日本のデフレ問題は「消費税の引き上げに原因がある」から、「政府は財政出動をしろ!」と主張するのは、あまりにも単純すぎるのです。
要するに、財政出動派の多くはマクロ経済学の信奉者なのです。彼らは単純に、今の供給量に対して需要が足りていないのだから、政府に対してその分だけお金を出せと主張しています。総供給と総需要をただの総額として見ているだけで、その中身を見た議論ではありません。
彼らはミクロを見ていないので、誤解しているのです。100台の車を買う人がいるかどうかというミクロ分析をせずに、90台しか売れないという現実を、お金が足りないからだと都合よく決めつけているだけです。
インフレになるまで財政出動をしろ、と言っている人が、人口動態による需給の変化の問題を考慮していない理由は明確です。それは、オーソドックスなマクロ経済学では、人口増加が暗黙のうちに仮定されているからです。単純な財政出動派は人口減少を考慮しないオーソドックスな経済学を素直に信じているので、誤解をしているのです。
そのため、彼らは財政出動さえすれば、デフレが解消し、日本の生産性が劇的に向上すると主張するのです。しかし、ここまでの説明をお読みになっていただければ明らかなとおり、人口が減少している経済ではそのとおりになる保証はありません。
財政出動は現状維持のためには使ってはいけない
それどころか、無秩序・無条件な財政出動は大変な危険を孕んでいます。
多くの経営者は、既存商品を求める人が減っているので、売上の減少に直面しています。私自身、観光戦略でも、小西美術工藝社の仕事でも、それを強く実感しています。
この場合、本来は新しい商品を開発し、新しい需要を発掘をしないといけないのですが、それは口で言うほど簡単なことではありません。もちろんリスクもありますし、労力も甚大です。
そこで経営者たちは、会社を守るために競争を制限して、減った需要を政府に補完してほしいと要望する誘惑に駆られます。実際、たとえば呉服業界は国に対して、今の日本人は着物を買わないから政府に買い上げてほしいと要望しています。
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