「本当は働きたい」願望に火をつける 主婦のパートタイム派遣で急成長

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主婦派遣のベンチャー、ビースタイルの社内。自社でも多くの主婦が働いている(撮影:梅谷秀司)

「ハローワークに求人を出したが、さっぱり音さたがない」「前任者が辞めて以来、1年以上空席のままだ」……。多くの企業が人手不足に頭を悩ます中、中小・ベンチャー企業の人材採用は特に深刻な状況である。そこで今、新しい労働力として注目を集めているのが、眠れる優秀人材、”主婦”だ。

日本では今でも約6割の女性が、結婚や出産を機に離職し、家庭に入る。女性の労働力率は、20代後半から30代にかけて、谷となるM字を描く。6歳未満の子どもを持つ女性の就業率はわずか34%。30代後半以降、就業率はゆるやかに上昇するものの、就労形態は非正規が多く、その内容もパートタイムの単純作業が中心だ。かつて社会の第一線でキャリアを積んでいた女性でも、いったん離職してしまうと、経験やスキルを生かせるような就職先は、なかなか見つからない。子育てや家事による時間の制約が大きなネックとなるためだ。

ビースタイルは、こうした女性、つまり社会人経験のある主婦に特化した人材派遣会社である。2002年の創業以来、これまで4万人以上の主婦を企業に派遣してきた。「高いビジネススキルとコミュニケーション能力を持ちながら、働きたくても働けない主婦がたくさんいる。日本の成長戦略を進めるためにも、優秀な女性たちが働き続けられる環境を作らなければいけない」と、同社の三原邦彦社長は力を込める。

優秀な主婦を企業に送り込むにあたってカギとなるのは、働く時間や日数の融通が利くパートタイム労働であること、かつ、社会人経験を生かせる事務職であることだ。家庭におさまっていた主婦たちの”働きたいニーズ”は確かに絶大で、現在ビースタイルの主婦派遣サービス「しゅふJOB」に登録している主婦の数は約9万人にも上る。彼女らの社会人経験は平均12.4年。一般常識もビジネスマナーも心得た優秀な人材を低コストで雇用できることを掲げ、ビースタイルは企業の主婦向け業務を開拓してきた。

1日6時間、週3日勤務でワークシェア

岸田直美さん(39)は、アウトドア用品などの輸入販売を行うインターテック(東京都渋谷区)で、週3回、営業事務の仕事に就いている。朝は9時に出勤。午前中は全国の店舗から送られてくる注文の処理をこなし、午後は返品作業や在庫確認などに忙しい。退社は16時。幼稚園に通う5歳の子どものお迎えに間に合うように会社を出る。勤務日は、ペアを組んでいるもう一人の女性と希望を出し合い、1カ月ごとに決める。幼稚園の行事など、予定があらかじめわかっていれば、その日の勤務は避けられる。子どもの急病で休まざるをえなくなれば、勤務を交代してもらえることもある。「融通が利くシフト制の勤務は、家事、育児、仕事のバランスをうまく取ることができる。こういう仕事をずっと探していました」(岸田さん)。

出産前は別の企業でフルタイムの正社員として、残業もこなしながら働いていた。出産を機に退職。子どもが幼稚園に入ったころ、「もう一度働きたい」と仕事を探し始めたが、パートではなかなかやりたいと思える仕事がない。事務の仕事がしたくてフルタイムの派遣会社に登録したが、1年ほど働いた後に辞めてしまった。幼稚園の行事や子どもの病気で、休むたびに後ろめたさを感じたためだ。そんなときにインターネットで見つけたのが「しゅふJOB」だった。すぐに会員登録をして説明会に参加した。

「とにかく有能ですよ」とインターテックの石谷章社長は言う。「段取りがうまくて、限られた時間でも、シャキシャキ物事を処理してくれる。マルチタスクが得意で気も利く」(石谷社長)。インターテックでは現在、岸田さんを含め4人の主婦派遣に営業事務を任せている。いずれも週3日勤務で、4人のワークシェアリングでこなす。彼女らの業務は以前は社員が行っていたもの。1人の社員が退職した後、補充ができず、フルタイムの派遣社員2人に任せることにした。だが、1人が休むごとに結局社員がサポートに取られ、業務の進捗に支障が出る。そんなとき、ビースタイルに出会った。フルタイム派遣2人を入れていたころより、コストは15~20%減。石谷社長は「ほかにも、主婦派遣に任せられる業務があると思う。これだけメリットがあるならどんどん活用したい」と前向きだ。

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