「権力集中・箱庭・仮免許」菅氏の失敗を考える3項 選挙の顔として勝ったことない菅氏に恩なし?

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菅首相が退陣に至ったのはなぜなのか(写真:Kim Kyung-Hoon/Bloomberg)

自民党総裁選に向け、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎行政改革相の3人が名乗りを上げている(9月15日の執筆時点)。

1年前に首相の座に就いたばかりの菅義偉首相が再選をめざして立候補し、間近に迫る衆院選の「選挙の顔」たりうるかが最大の争点になるはずだった。ところが菅首相は立候補せず、党総裁としての任期満了で首相を退くことを表明した。しかし、実態は立候補断念に追い込まれ、退陣を余儀なくされたのだ。

就任時には6~7割という高支持率だった首相が、支持率低下にあえぎ、大型選挙で負け続け、ついに、退陣に至ったのはなぜなのか。3つのキーワードで考えたい。「権力集中」「箱庭」「仮免許」である。

「あいつは出来の悪い官僚だ」というレッテル

まずは「権力集中」から。第2次安倍政権の行き着く果てが、菅政権の失敗につながっている。安倍政権の最終盤に明らかになった政権の迷走の原因は「官邸1強」であり、菅政権の失敗は、権力集中の濃度を増した「首相1強」が背景にある。

「官邸1強」に起因する安倍政権の迷走の原因は何か。

第2次安倍政権は、官邸主導政治をめざした平成の政治改革の完成型と言われたが、政権が長期化するにつれ、改革のひずみがあらわになった。詳しくは、『自壊する官邸』(朝日新聞出版)に譲るが、概説すると、こうだ。

「安倍1強」と呼ばれた意味は、2つある。1つは自民党内の政治家に対し安倍晋三首相が、圧倒的な力を持つこと。もう1つは、各省庁に対し首相官邸が絶対権力を持つ「官邸1強」という構図のこと。ここで見ていくのは後者である。

官邸主導の源は、官僚の人事だった。第2次安倍政権の首相官邸は、人事にこだわり、政権発足直後から、方針に合わない官僚を要職から外したり、反論する官僚を左遷したりした。2014年には、内閣人事局が設置され、霞が関に対する官邸主導の関係は決定的になった。

しかし、時間が経つにつれ、人事権を駆使する統治のあり方のマイナス面が明らかになった。官邸が人事権を自在に振るうにつれ、官僚は次第に萎縮した。官僚が「これはいいアイデアだ」と思うような政策であっても、官邸の意向に沿わないのであれば、提案しなくなった。提案すれば「あいつは出来の悪い官僚だ」というレッテルが貼られかねないためだ。そして官僚からアイデアが出なくなった。

安倍政権の機能不全が進む中、コロナ禍が襲った。コロナ対応は誰にとっても初めての事態である。本来なら、「日本最強のシンクタンク」とも呼ばれる霞が関のアイデアを官邸が吸い上げ、優先順位をつけ、政策を練り上げなければならなかったが、霞が関からアイデアが出る状態ではなくなっていた。

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