部下を「自分のコピー」に育ててはいけない理由 イエスマンばかり育成した社長が直面した苦難
学生時代の卒業式や結婚式で、分厚い記念アルバムをもらったことがあると思います。
感情コンサルに相談にこられた遠井社長は、そういう特別なアルバムを作る会社の社長さん。社員は約50名、創業から100年以上の歴史がある老舗です。
遠井社長は、自分で営業から商品開発まで全部できてしまう方で、ずっと社員に頼ることなく、突っ走ってこられたそうです。社員教育については、「自分のコピーを作ればうまくいく」という考えで、社員には、自分で決めたルールを守らせていました。
「どんなルールを、決めていらしたのですか?」
「『始業の3分前には席について、仕事をはじめる準備をする』とか、『仕事は締め切りの1週間前には一度、報告ができるレベルにまで仕上げる』などですね」
「それを、社員のみなさんに守らせていたのですね」
「そうです。すべてマニュアル化して徹底していました」
「そうやって、社長さんのコピーを育てようとされていた」
「はい。それが一番、効率がよくて、会社がうまくいくと思っていました」
時代の流れで売り上げは低迷
かつて、業績は順調でしたが、世の中のデジタル化の流れのなかで、だんだんと売上が低迷してきます。
「分厚いアルバムが、時代に合わなくなってきたんです。それで、私ももう歳で頭が固くなってきたし、それなら、社員から会社の今後について、何か新しい意見を聞こうと思って話をしてみたんです。そうしたら、誰も何も考えていなかった(苦笑)」
「分身の術を使ったつもりだったのに、誰ひとり育っていなかったのですね」
「そうです。考えてみれば、全部、自分でやってきて、周りにイエスマンを育ててきたのですから当然の結果です。社員にしてみたら、『会社の将来について、今さら聞かれても、今までどおり、社長のお好きにやれば』という気持ちだったと思います」
そんなとき、息子さんから会社を継ぐ気持ちがないことを告げられたそうです。
遠井社長は、いよいよ、自分が辞めたあと、会社をどうするかで悩みました。
「息子が継がないなら、会社は売却するか、社員の誰かに継がせるかのどちらかです。そのことで悩んでいたら、なんだか、無性に社員たちに対して腹が立ってきてしまって……。『自分がこれだけ頑張っているのに、なんだよ、お前ら!』って」
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