郵便局が「地方銀行」を買収し成長するシナリオ 最近の決済事情から見えてくる銀行の将来像

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銀行は単純に削減するだけではなく、新業務も行わなければならない。新業務の一案が商社機能である。

その商社機能の目標が郵便局(JPグループ)である。実は現在のJPグループは銀行から目標とされているのである。ちなみに、郵便局の商社機能の最たるものである物販サービス「ふるさと小包」は、日本の政策として、現在導入されている「ふるさと納税」のベースとなったアイデアである。郵便局のお客様の商品を、郵便局を経由して販売しているのである。

さらに、郵便局は公共サービスも行っている。銀行も同様にその信用度をベースに公共サービスの導入も検討されている。そういう意味でも、JPグループが進んでいる基本的な方向性は間違っていないと言うことができる。

郵便局の資産やインフラを活用

銀行などは削減が進む。とくに地方では支店の削減(廃止)が進んでいくが、その支店を郵便局が引き継ぐことが現状望ましいと考えられる。ゆうちょ銀行は悲願である法人貸し出しを開始することができる。それは、ゆうちょ銀行が、地方銀行など同じ「銀行」業を買収することによって可能となる。

業務と離れた買収(M&A)であれば、オーストラリア物流大手のトールの買収の4000億円の損失のような可能性も低くなる(3月に1500億円を出資した「楽天」が、すぐ7月に投資不適格になったのは非常に気になるが)。

そのときに最も大事なのは、銀行や信用金庫に勤務する方々が、今後郵便局に勤務することになるが、そのときの、マインドリセットが最も重要ではないかと考える。

日本の経済や金融を考えると廃止される地方銀行は郵便局に買収させて、お客様や経済に影響が出ないというこのスキームが望ましい。そして、このスキームは信用金庫でも活用ができるのは言うまでもない。

宿輪 純一 帝京大学経済学部教授・博士(経済学)

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しゅくわ じゅんいち / Junichi Shukuwa

帝京大学経済学部教授・博士(経済学)。1963年生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒。富士銀行、三和銀行、三菱東京UFJ銀行を経て、2015年より現職。2003年から兼務で東大大学院、早大、慶大等で非常勤講師。財務省・金融庁・経産省・外務省、全銀協等の委員会参加。主な著書に『通貨経済学入門(第2版)』『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞出版社)、『決済インフラ入門〔2020年版〕』(東洋経済新報社)、『円安vs.円高(新版)』『決済システムのすべて(第3版)』『証券決済システムのすべて(第2版)』『金融が支える日本経済』(共著:東洋経済新報社)などがある。

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