1駅先のほうが安い?鉄道運賃「珍現象」の数々 割安運賃区間の近隣、1駅で大幅に上がる場合も

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最後に取り上げるのは再び東京だ。常磐線から東京メトロ千代田線の北千住―西日暮里間をはさんでJR線を利用する場合、前後のJR線区間は通算するという運賃制度の特例がある。これは千代田線の開業によって常磐線各駅停車が上野に直通しなくなったためにできた制度だ。

だが、西日暮里乗り換えでもたった1駅で運賃が大きく異なる場合がある。例えば亀有から西日暮里(千代田線)経由で秋葉原や神田までは390円。だが、秋葉原の1つ千葉寄りである総武線の浅草橋まで行くと、西日暮里からの距離でいえば同じ運賃圏内(160円)であるにもかかわらず、なんと470円にはね上がってしまう。

旧国鉄管理局の名残り?

この例は、鉄道工学の第一人者である曽根悟・東京大学名誉教授に伺った例だ。

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この点について、曽根名誉教授は国鉄時代の鉄道管理局の違いに由来すると語る。「秋葉原から西側は東京の管理局だったが、東側は千葉鉄道管理局だった。東京は『東京鉄道管理局』1つだったのが東京北局・西局・南局に分かれたが(編注: 1969年に分割)、元東京の3局は仲間、でも秋葉原から東側は千葉局で『別会社』という意識があった」と曽根名誉教授はいう。

ただし、亀有から北千住乗り換えでJRだけを使って行く場合は秋葉原・神田・浅草橋とも220円で済む。北千住で地下ホームから地上ホームに上がる必要はあるが、運賃は大幅に安くなる。

いかがだったであろうか。日常に潜む矛盾とは意外なところにあるものである。鉄道に限らず、普段何気なく使っているものに疑問を持つ、ちょっとした好奇心があればこういった面白い話はさまざまなところに出てくるのではないか。本稿が退屈な日常にちょっとしたスパイスをもたらすことができれば幸いである。

北村 幸太郎 鉄道ジャーナリスト

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きたむら こうたろう / Koutaro Kitamura

1989年東京生まれ。2008年昭和鉄道高等学校運輸科卒業、2012年日本大学理工学部社会交通工学科マネジメントコース卒業。乗り鉄、ダイヤ鉄。学生時代は株式会社ライトレールにインターン生として同社の阿部等社長のもと、同社主催の「交通ビジネス塾」運営などに参加。

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