アフガン混乱に失望「欧州の米国離れ」が始まった 独自の防衛力構築へ「欧州軍」創設の議論再燃

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そもそも世界の指導的立場で西洋文明を繁栄させてきた環北大西洋のアメリカと欧州諸国は、第2次世界大戦終結後はNATOによる政府間軍事同盟を構築し、旧ソ連の脅威に立ち向かい冷戦を乗り切った。

そして9.11米同時多発テロ後の2001年10月に、ブッシュ大統領(当時)がアルカイダとタリバンに対する空爆を発表し、NATOはこれまでの歴史の中で1度だけ、第5条(集団防衛条項)を発動。加盟30カ国を含む、51を超えるパートナー国が軍隊をアフガニスタンに派遣し、配備のピーク時には合計13万人の軍隊が参加した。

NATOの戦闘任務は2014年に終了したが、連合軍はアフガニスタン治安部隊の訓練と助言を支援するという理由で残った。そして、2021年8月までの20年間でアメリカ兵以外の、イギリス兵457人、フランス兵88人、ドイツ兵42人など欧州から派兵した1145人がアフガニスタンで死亡している。

欧州軍浮上の背景にはイギリスのEU離脱も影響

今回のアフガン撤退の大混乱は、まずドイツに大きな衝撃を与えた。ドイツは第2次世界大戦以来、アフガンで初めて主要な戦闘任務に加わったが、今回のような形での駐留終了は想像していなかった。

退任間近であるメルケル首相の後任候補と目される保守のアルミン・ラシェット氏は、アメリカの撤退について「NATO創設以来経験した最大の大失態」と不快感を露わにした。

前出のフランスの元欧州問題担当相のロワゾー氏は「欧米関係はバイデン政権で元に戻るだろうというのは幻想であり、もう元には戻らないことに気づかされた。それをEUは明確に自覚する必要がある」と述べている。

欧州軍創設の議論が浮上した背景には、アメリカ寄りのイギリスがEUを離脱した今、安全保障政策で新たな自主防衛政策を打ち出しやすくなっている事情もある。EUはコロナ禍で弱体化した経済不安の中にあり、EU市民の政治不信とEUの無力さへの怒りが高まり、反EUのポピュリズム運動の過熱も懸念されている。

そこにアフガン撤退の混乱が重なり、アメリカに非常に依存している防衛分野での再検討議論に火が点いた。フランスの日刊紙ル・モンドは「より大きな自治が必要であるということが徐々に認識されている」とフランスの現欧州問題担当相クレマン・ボーヌ氏が述べたことを伝えている。

さらにル・モンドは9月2日のEU外相の非公式会合に合わせ、「マクロン大統領はアフガン撤退の大失態で、欧州が分裂しないよう注意深い姿勢を維持している一方、同氏が以前から提唱している大陸欧州に必要な自治と集団的防衛努力の必要性について、認識の正しさを確信した」と書いた。

次ページ2018年に欧州防衛軍の創設を訴えていたマクロン氏
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