「日韓対立の原因は、ほぼ安倍首相にある」 ペンペル教授、首相を歴史修正主義者と痛罵

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――日本と韓国との間で何が起こると思うか。

安倍首相は朴槿恵大統領と会談する重要性について、たびたび語っている。しかし、彼女が「ただ会うだけではダメ」と言っていることの意味を分かろうとしない。彼女は安倍首相をナショナリスト、歴史修正主義者と見ている。安倍首相はそこを理解していない。第二次世界大戦や韓国の植民地化など両者の歴史観の違いは大きい。安倍首相は自分の条件での和解を求めている。公平に言えば、朴大統領の側も自分の条件での和解を求めているのだが・・・。ただ、彼女の条件のほうが不合理さが少ないと思う。

安倍首相は慰安婦問題について、軍隊の関与があったことを認めてない。そのことが韓国との関係改善を非常に困難にしている。日本の戦前の歴史は非常に複雑であり、プラス面もあればマイナス面もある。ところが、安倍首相はいかなるマイナス面も認めたくないようだ。

村山談話、河野談話を復唱すれば関係は改善

――日韓関係改善の動きはあるのか。

あまりない。先日会ったダニー・ラッセル国務次官補の話では、ケリー国務長官は日韓関係改善を切に望んでいる。ただ、現段階で日本と韓国との間を取り持つことは、ハマスとイスラエルの間を取り持つことよりほんの少しだけ容易ということだ。朴大統領は安倍首相の歴史観に応じるくらいなら、関係改善の必要はないと見ている。

安倍首相が靖国参拝を1年控えたくらいでは事態はよくならない。首相在任中は参拝しないと公式表明すれば少しはよくなる。さらに、村山談話や河野談話の内容をもう一度、復唱すればもっと効果的だろう。安倍首相がそういう行動をすれば、安倍首相と朴大統領との相互訪問も可能になるのではないか。

――安倍首相は北朝鮮とはどのように対峙しようとしているのか。

日本は韓国の対北朝鮮アプローチには束縛されていない。安倍首相は拉致問題を国内支持率向上のために利用している。同時に、安倍首相は北朝鮮の核兵器に関する6カ国協議の進展を阻害している。安倍首相は拉致問題をオ―バーに扱い過ぎている。横田めぐみさんが生きているとか、何百人もの日本人が誘拐されたとか、そういう厳然たる証拠があるとは思えない。

安倍首相のロシアに対する働きかけにも似た要素がある。安倍首相が北方領土交渉を前進させ、また拉致問題を解決させれば、国内での支持率は向上する。それは米国にとって混乱要因だ。米国はロシアの孤立化を狙っている。日本は対ロ制裁に参加しているが、日ロの交渉窓口は閉ざさなかった。北朝鮮に対する米国の優先政策は核廃絶。このためには、厳しい経済制裁が重要な役割を果たす。

日本は米国が懸念しているにもかかわらず、対ロシア、対北朝鮮についてわが道をいく構えを見せ続けている。オバマ政権は東アジア地域の安定を図るべく、かなり対ロシア、対北朝鮮について、ニュアンスのある対応をいくつか講じている。部分的な軍事力、部分的な危険分散、部分的なエンゲージメントなど多様な手段を講じている。安倍首相はそういうニュアンスに欠けている。

安倍首相は北朝鮮とロシアとの関係改善によって習近平国家主席や朴槿恵大統領の鼻をあかせると思っているようだ。彼の考えでは、それが正しいことなのだろう。

――安倍首相は習国家主席とも会いたがっている。

その通りだ。安倍首相はさまざまな外交問題を積極的に解決する人物として東アジア地域内だけでなくグローバル・コミュニティーの中で認めてもらいたいのだと思う。

しかし、習国家主席は安倍首相に会いたいとは思っていないのではないか。習国家主席の目からみれば、日本は大きな障害だ。日本が何かしでかすと中国国内ではインターネットの上で大騒ぎが起こる。たとえば、安倍首相の靖国参拝、南京大虐殺の真実に挑んだ教科書などだ。

習国家主席は韓国とのニュアンスのある関係を進展させるのに最善を尽くしている。習・安倍会談が近いうちにあるとは思えない。日中の経済関係は密接だが、習国家主席が日本を敵国扱いするのを諦めるほどのものではない。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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