狭小住宅に移り住んだ人たちが語る「本当の幸せ」 でかい家に住むだけが充実した生活ではない
ダウンタウンまで車で数分という絶好の立地ゆえに、住民の平均年齢は25歳から45歳と比較的若く、男女はほぼ半々。中には60代や70代のリタイア組もいる。ほとんどの住民が独り暮らしか、カップルで、現在、住民の中に子どもはいない。入居者は、あらかじめ、犯罪歴があるかなどのバックグラウンド調査をパスする必要がある。
住民の多くはコミュニティ内に2~3年ほど住んで、自分のタイニーハウスと共にほかの土地に移っていくことが多いという。「短期間であちこちを移動するノマドタイプの住民はうちにはあまりいない」とマネーさん。
一般的にタイニーハウス・ライフ実現の際に最も難しいのは「土地の確保」と言われており、中には9年間という長期に渡ってこのコミュニティ内に住み続けている電気技師の男性もいる。この男性は、外壁がボロボロに剥がれた古いトレーラーに住んでいたが、マネーさんは見かねて彼のために、新築のタイニーハウスを手作りした。
「独立記念日には湖畔で住民が40人ぐらい集まってパーティーをしたり、ピザを焼いて食べたり。たき火やアウトドアを心から楽しむ仲間が多い。パーティーに参加したくない場合は、誰もしつこくしないから大丈夫」(マネーさん)。敷地内にある菜園では、住民たちが自主的に野菜を栽培しており、温暖なフロリダの気候のため、かなりの量の収穫があるという。
「地に足をつけて生活する感覚」
土の上に直接住むことができる——。これがタイニーハウスの醍醐味のひとつでもあり、通常の一軒家を建てる6分の1ほどの値段でその夢が叶う。部屋の上下に他人が住むアパート生活ではほとんど味わえない「地に足をつけて生活する感覚」を一度経験すると、病みつきになる人が多いようだ。
オーナーのマネーさんと管理を担当するマネージャーも、敷地内に住んでいる。住民たちはDIY好きが多く、誰かの家で修理が必要になると、お互いが助け合ってすぐ修理してしまう。ハリケーンの際も、住民総出でタイニーハウスをロープで地面に固定し、暴風で湖に吹き飛ばされないように守った。
ロックダウンによりアメリカ中で多くの人が職を失ったパンデミックの最中も、「土地賃料が払えないから待ってほしい」と懇願に来る住人は1人もいなかった。「シンプルで素朴な暮らしを好む人が多く、モノを買って散財するタイプではないので、ちゃんと計画的に貯蓄してきた人がほとんどだと思う」(マネーさん)。
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