「ジュラシックパーク」主役決定までのドタバタ劇 ハリソン・フォードが主役を演じた可能性も

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ほかにもティム・ロビンスやケビン・コスナー、デニス・クエイドなどが候補に上がったという。紆余曲折ありながらもサム・ニールに主役が決まったのは、撮影開始まで3〜4週間前のこと。

主役を演じたサム・ニール(写真:Universal Pictures/Getty)

ちなみにジェフ・ゴールドブラムが演じたイアン・マルコム博士役のオーディションには、実はジム・キャリーも参加したそう。彼ならあの役をどう演じたのか、つい想像をめぐらせてしまう。

本当は「シンドラーのリスト」が本命だった?

ところで当時、スピルバーグには本作とは別にどうしても作りたい映画があった。それは『シンドラーのリスト』だ。

ホロコーストという難しい題材を扱うシリアスでR指定の映画は、当時ですらスタジオが喜んで作りがる映画ではなかった。実はユニバーサルは利益の見込めそうな娯楽作『ジュラシックパーク』を先に作ってくれたら、『シンドラーのリスト』も作っていいとスピルバーグに約束。そうして彼は『ジュラシック・パーク』の製作中、ヨーロッパで『シンドラーのリスト』を撮影することになった。

1993年に公開された両作品。『ジュラシックパーク』は前述したように歴史的な興行成績を達成、『シンドラーのリスト』はアカデミー賞7部門に選ばれるという快挙を成し遂げた。

『ジュラシックパーク』の製作費が推定6300万ドルに対し、『シンドラーのリスト』はその3分の1の2200万ドル。それにも関わらず、3億ドル以上の売り上げだったので商業的にも大成功だ。

興味深いことに、スピルバーグは当初『シンドラーのリスト』を自分で監督する自信がなかったという。そこでマーティン・スコセッシやロマン・ポランスキーに監督しないかと聞いてまわるも、スコセッシから「自分でやるべきだ」と背中を押され、決断したそうだ。結果、スピルバーグ初のアカデミー賞監督賞受賞につながったのだから、スコセッシの功績は大きい。

『ジュラシック・パーク』に話を戻すと、現在、新三部作『ジュラシック・ワールド』の最終章『Jurassic World: Dominion』が製作中だ。

新三部作でのスピルバーグの肩書は、製作総指揮。最新作はコロナの影響で何度か撮影中止になるなど苦労も多く、ようやくポストプロダクション(編集工程)にたどり着いた。

最新作にはニール、ローラ・ダーン、BD・ウォンが復帰。『ジュラシック・ワールド/炎の王国』で姿をみせたゴールドブラムも本格的に出演する。最新作が公開されるまでにはまだ1年あるものの、金曜ロードショーで1作目が放映されるこの機会に改めてを見直してみるのはいかがだろうか。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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