「第3子容認」の中国と日本の少子化対策の共通点 若者たちからは冷ややかな声も聞こえてくる

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もう1つの原因は、子育てにかかる経済負担だ。都市部の教育熱心な親は、子どもが生まれる前から大学進学を目指してレールを敷き始める。英語教育が充実した幼稚園に通わせ、習い事や塾を掛け持ちし、よい学区を求めて引っ越しを厭わない。

「学房区」と呼ばれる文教エリアの住宅は高騰に歯止めがかからず、不動産にかかる費用も「教育費」の範疇に入る。「女性が子どもを産まないのは政府の制限によるもので、一人っ子政策を撤廃すれば2人目を産む」という政府の考えは、甘かったというほかない。

地方政府、産休延長や子ども手当導入

今年5月末、「第3子容認」の方針が発表された際も、女性たちは「3人目を産めるのは金持ちだけ」「1人どころか、結婚も無理かも」と冷ややかだった。

産まない原因が子育て負担の重さにあるとようやく認識した中国政府は、今回の法改正で、税金や保険、住宅、就業など各方面で負担を減らす方針も示した。この方針を受け、以下のように独自の支援策を導入する地方政府も現れた。

北京市:第3子の産休を、法で定められた98日に30日追加する。職場の同意があれば、さらに1~3カ月延長できる。配偶者の育児休業も15日取得可能。
広西チワン族自治区、安徽省、甘粛省:生育保険(出産のための保険制度)に加入している女性の3人目出産にかかる医療費や手当を支給する。
四川省攀枝花市:2人目以降の子どもが3歳になるまで毎月500元(約8500円)の手当を支給する。

これら先行事例は、「子ども手当」「産休や育休の拡充」「出産費用、医療費助成」が軸で、日本で以前から導入されているものが多い。ただ、中国の場合は大半が第3子からの適用で、四川省攀枝花市の子ども手当は3歳で打ち切られる。2人目の出産に躊躇している夫婦が多いことを考えると、効果は限定的だろう。

中国政府は教育費の負担を減らすために学習塾や習い事の規制にも乗り出した。北京市在住の30代女性は、「塾産業は『あなたが私たちを選ばないなら、当校はあなたの子どものライバルを鍛える』といったような広告で親の焦りをあおっており、業界の健全化は必要」と規制に理解を示すものの、それが少子化の解決につながるかについては、「少子化は社会構造の問題だから、局地的に何かを叩いても意味がなさそう」と疑問を口にした。

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