「第3子容認」の中国と日本の少子化対策の共通点 若者たちからは冷ややかな声も聞こえてくる

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今の中国の少子化対策の空気は、2000年代の日本を彷彿とさせる。第二次ベビーブーマーの女性の出産適齢期とバブル崩壊後の不況が重なり、「正社員の夫、専業主婦の妻、子ども2人」という「標準モデル」が崩壊する中で、政治家は「産みやすい社会」の再構築に本腰を入れないまま、女性に出産へのプレッシャーをかけ続けた。

2003年、自民党少子化問題調査会長だった森喜朗元首相は「子どもを一人もつくらない女性が、好き勝手とは言っちゃいかんけども、自由を謳歌し楽しんで年取って、税金で面倒見なさいっていうのは本当はおかしいんですよ」(西日本新聞より)と発言し、2007年には当時の厚労相が「女性は産む機械」と述べ、共に大バッシングを浴びた。

結局、第三次ベビーブームは起きず日本の少子高齢化が不可逆的なものになった。社会での役割が増え続け、経済の減速で生活不安も尽きない。なのに国のために産めよ増やせよと迫られた女性がぶち切れる。中国も同じ道をたどっているのかもしれない。

厦門大学教授の発言が炎上

今年8月中旬、厦門大学教授の「子どもの数に応じて社会保険や年金に差をつけるべき。子どもがいる方が経済的に得ならば、出産意欲は高まるだろう」という発言が、「子どもを産まないことへの懲罰だ」とSNSで大炎上した。

同教授はその後、「子どものいない人にも基本的保障を提供する。子どもの数が多いなら、経済負担を軽減するため公共の資源を手厚く配分していくという趣旨だった」と釈明した。

北京市でIT企業に勤める女性(27)は、恋人と同棲していることを遠方で暮らす両親に隠している。「大家族の方が幸せ」という価値観の両親に知られたら、間違いなく結婚をせっつかれるからだという。

「子どもの頃は『勉強しろ、いい大学に行け』と言われ、就職したら『結婚はまだか』とせかされる。私が大学生のときは一人っ子政策だったけど、今結婚したら親からも国からも『たくさん産め』と言われそう。現実には彼氏との給料を足しても、北京で家を買うのは難しい。子どもが増えたらさらに広い家が必要になる。子どもの出産は、3人どころか1人でさえも、ぜいたくなことだ」と漏らした。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
X: https://twitter.com/sanadi37
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公式サイト: https://uragami-sanae.jimdosite.com/
 

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