「アストラゼネカの血栓」怖がる人が知らない事実 「2回目はmRNAワクチン」がなぜできないのか?
1回目と2回目のワクチンを別の種類にすることは、添付文書に記載されていない「適応外使用」にあたる。だが、7月22日付で発表されたECDCの報告書も、これまでのエビデンスからは、混合接種は安全かつ適切な免疫反応が期待されるとしている。
ドイツの研究では、ファイザー2回接種のほうが、アストラゼネカ2回接種よりも抗体の付き方はよかった。ただ、アストラゼネカ接種後にmRNAワクチンの接種を行う混合接種であれば、アストラゼネカ2回接種よりも強固な抗体産生が得られ、T細胞性免疫も引き出されたという。
治験では、アストラゼネカ2回接種のワクチン有効率(発症予防効果)は81.3%とされている。混合接種の有効率データは出ていないが、抗体価等で見る限りこれを上回る予防効果も見込める、というわけだ。
また、混合接種では2回目後の副反応(軽~中程度)の頻度は上がるものの、ECDCは十分に許容範囲としている。たしかに発熱、寒気、倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛といった症状はアストラゼネカ2回接種より多く見られたが、ほとんどが2日以内で収まっている。
「だったら自分も1回目はアストラゼネカでいい、でも2回目はmRNAワクチンを打ちたい」という人もいるだろう。私も混合接種には賛成だ。
8月29日には、ワクチン接種を担当する河野規制改革担当大臣が、政府内でも検討中であることを明らかにした。
混合接種を阻んでいる「2つの壁」
現状では、国内で混合接種を行うには「2つの壁」がある。
1つ目は先のとおり、異なる種類のワクチンを打つことは、厚労省の承認審査を受けておらず適応外使用となることだ。
適応外使用そのものは、法律で禁じられているわけではない。しかし、ガイドラインへの記載など医療現場で広く知られた使用法でない場合、万が一にも健康被害等があれば、責任は医師と医療機関が全面的に負うことになる。
2つ目は、新型コロナワクチンの接種は、医療機関等が自治体からの委託を受けて実施していることだ。現状で混合接種を強行すれば、健康被害がなくとも委託契約は解除となるだろう。あえて実施しようという医師や医療機関が出てくるとは思えない。
今こそ政府の牽引が求められている。すなわち国の責任において混合接種を推奨し、適切な補償を約束するべきだろう。海外でも、アストラゼネカとmRNAワクチンの混合接種は、各国政府の推奨の下に実施されている。
デルタ株が猛威を振るう中、mRNAワクチンの供給は追い付いていない。それでも選びうるワクチンの中で、国民の健康を守るためにまだやれることがある。アストラゼネカ接種を、国民が納得して積極的に受け入れられる体制づくりが重要だ。
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