安いと安易に「定借物件」に飛びつく人が陥るワナ 購入時に退去後の住まいについても考えたい

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最近は神社や大使館の敷地など興味深いところに定期借地権マンションができていますが、ご自身の価値観と照らし合わせた事前の検討がおすすめです。

購入資金については、一般的なマンションより物件価格が安い分だけ楽な返済計画になると考える人もいますが、そうとも言い切れません。土地の権利金や保証金のほか、別途前払賃料、解体準備基金といった負担を求められることがあり、【購入当初に必要な資金】としては、物件にもよりますが、一般的なマンションに比べて高めになることもある印象です。

また、【ランニングコスト】については、住宅ローン返済のほかにも「維持費」(管理費・修繕積立金、地代、解体準備金、建物の固定資産税・都市計画税)がかかる点に注意が必要です。

子どもを私立に進学させるご家庭なら、維持費も含めた住居費が年収負担率20%程度に収まることが1つの目安になります。年収800万円の例で言えば、維持費も含めた年間住居費が200万円程度に収まるイメージです。住宅ローン返済だけで年収負担率20%以内を満たしていても、維持費が思いのほか大きいため、安易な判断は後々家計を苦しくします。

また、「維持費」は住宅ローン完済後もかかります。最後まで住みきる場合は、退去後の住まいの手当てイメージは持っておきたいところです。

”引っ越し”のタイミングでリスクが顕在化

定期借地権マンションならではのリスクが顕在化するのは、終の棲家として住んでいたものの、途中で引っ越すことになったときです。タイミングによっては「売却」は難しい可能性もあり、「賃貸に出す」という選択肢が選べる物件かどうかでその後の暮らしの満足度が変わります。

「売却」できなくても「賃貸に出す」ことができれば、ローン完済後は実家に住み、家賃収入を暮らしの潤いに充てることができるかもしれません。

ただし、築年数の経ったマンションがどれくらいの家賃で貸せるかは物件によります。定期借地権での貸し出しが基本となるため、地域の相場より低めの家賃設定にせざるをえない可能性もあることには留意が必要です。

もちろん、最初から投資感覚で値上がり益を狙うなら、資産価値が高い物件を選び、売り時を考えての購入が重要です。

以上、1992年8月以降から登場した定期借地権マンションについて留意点などを見てきました。早いもので築30年ほどの物件もあるわけですが、管理費・修繕積立金と地代負担が重いと、いくら物件価格を下げても購入希望者は二の足を踏んでいます。

最期まで住みきる覚悟や、もしものときに「賃貸に出す」ことができる立地選びが、定期借地権マンションを購入する際には一番大事と考えます。

竹下 さくら ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士

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たけした さくら / Sakura Takeshita

兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学商学部にて保険学を専攻。損害保険会社の営業推進部および火災新種業務部、生命保険会社の引受診査部門の勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。個人向けコンサルティングを主軸に講演・執筆を行う。『「奨学金」を借りる前にゼッタイ読んでおく本』(青春出版社)、『「家を買おうかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)など著書も多数。

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