米金融政策はインフレ急進招くと中国が批判 中国は注目の金融シンポにも代表を送らず

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米カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムが間近に迫る中で、中国人民銀行(中央銀行)は米金融当局による新型コロナウイルス対応はリスクを伴うとして批判した。

中国共産党中央政治局はマクロ経済政策の「自主性強化」を進める方針を示しており、米連邦準備制度が資産購入のテーパリング(段階的縮小)を始めたとしても、中国経済が勢いを失う中で刺激策を強める意欲をにじませている。

一方で人民銀はコロナ禍を受けた米国による異例の刺激策がインフレ急進を招くとして米金融当局の見解よりもはるかに強い懸念を示している。

  

中国の金融セクター開放に加え、コロナのパンデミック(世界的大流行)で相対的に堅調だった中国経済が呼び水となり、世界中の資金が本土の資産市場に流れ込んだ。言い換えれば、投資家が米国でより高いリターンが得られると判断すればこの流れは反転する可能性もあるため、今回の国外からのマネー流入は米中の金融政策の相互関係を強めることにもなる。

中国当局は2016年のように以前なら制限や禁止措置で資本流出にブレーキをかけることができた。だが、それは資金を国内にとどめることが主な目的であり、世界の投資家を国内に閉じ込めることが狙いではなかった。市場の開放は56兆ドル(約6144兆円)規模の中国金融セクターの近代化にとって極めて重要であり、中国当局はその流れを反転させることには消極的だ。

強力な資本規制が講じられる可能性が低く、中国が金融政策の自主性を追求し、米国が金融緩和の縮小に向かうのに逆行して緩和を進めるとすれば、人民元安がその答えになるというのがアナリストの見方だ。

一方で人民元相場が下落すれば、ドル建ての負債を抱え既に資金難にある中国企業には一段と圧力が加わるとともに、15年の事実上の元切り下げ後と同様の資本流出につながるリスクもある。

米金融当局を批判

人民銀は最新の四半期金融政策執行報告で、米国ではパンデミック以降でマネーサプライ(通貨供給量)と国内総生産(GDP)の伸びに大きな差が生じており、主要国の中で「最も深刻な」インフレリスクに直面していると分析。易綱総裁はマネーサプライの拡大と名目の経済成長率を合致させることを目指す考えを示した。

  

人民銀は今月9日に公表した金融政策執行報告で、「大量の通貨は必然的にインフレを招く」と指摘。マネーサプライの急速な伸びは「金融規律の破壊」につながるとし、日米欧の中銀の政策は不利な副作用をもたらすとした。

パンデミック以降、米中間では大半のハイレベルの経済交流が止まったままで、人民銀はこの数年、ジャクソンホール会合に代表を派遣しておらず、今年の講演者リストにも記載はない。

国際通貨基金(IMF)で中国担当者を務め、現在はコーネル大学で教えるエスワール・プラサド氏は「米インフレリスクを巡る認識の違いは対立が続いていることと意思疎通が限られている結果かもしれない」と指摘する。

今年のジャクソンホール会合のテーマは「不均衡な経済におけるマクロ経済政策」だ。米中の政策の方向性が異なる中で、この不均衡は世界的にも当てはまる。

原題:Fed Policy Draws Chinese Criticism as PBOC Goes Its Own Way(抜粋)

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著者:Tom Hancock

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