とりわけ小泉内閣時に地方自治体に指示された「集中改革プラン」の策定とそれに基づいた改革の実行が、大きな影響を及ぼしている。この集中改革プランにより、限界まで身を削る削減が行われ、都市部の地方自治体には現業職員が残るものの、地方の自治体では、現業部門を委託したり非正規職員化したりする方向に動いた。
■地方公共団体の総職員数の推移
とくに23区の清掃の現場では清掃職員は削減され、清掃行政が都の所管であったときには8000人存在していたが、現在ではその半数以下の水準となった。人員の削減と並行して組織のスリム化も行われ、現業職員のみならず管理職も削減する文脈で組織の再編が行われていった。清掃事務所の集約化もこのような流れの中で進められていった。
人員の削減で「想定外」の対応が困難に
一方、人員の削減は、脆弱な業務実施体制という潜在的な問題を生んだ。委託化の中でも車付雇上化が進み、現場でどのような作業が行われているかを把握することが困難になった。清掃行政が23区に移管されて20年が経過するが、その間に1人も採用していない区は5区にものぼり、清掃職員を採用している区でも運転手の採用はなされておらず、その退職者の補充は雇上会社からの車両で賄われている。
結果、23区で保有する清掃車は、収集サービスの提供で必要になる台数のうち2割程度しか占めておらず、平常時の収集サービスは問題なく提供できても、自ら所有するリソースのみでは有事にサービスが提供できない状況となっている。
想定外の事態が起きない限り通常の清掃サービスは提供されるが、今回のようなコロナウイルスの蔓延を前にすると、これまでの減量経営、削減路線がいかに清掃行政を脆弱な体制へと変え、安定したサービス提供への懸案材料としてしまったかを浮き彫りにした。
そもそも自らのリソースの削減と安定的・継続的なサービス提供は相反する価値であり、コロナウイルスの蔓延により両者の追求は不可能であると明らかになったといえる。
近年では、想定外の自然災害に見舞われる地域が多く出てきており、その際にも現業職員の必要性が改めて認識されてきているが、ある程度のコストをかけてでも、自前で安定的にサービス提供ができる体制を維持する方向へと舵を切り直すことが必要になっていると思えてならない。
ただ、現在でもかなりの委託が進んでいるため、今後の清掃行政の実施体制に冗長性を持たせながら、急に直営化を志向していくことは非現実的な策である。そうではなく、現在機能する体制を前提としたうえで、社会にとって必要不可欠な清掃サービスをいかに安定的・継続的に提供していくかといった手法が今後問われてくる。
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