東西の新線構想も飛び出た「品川再開発」 東京都、JR、京急、西武…4者それぞれの思惑

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鉄道への効果も大きい。ガイドラインでは品川駅を再編し、現在は駅の2階にある京急線のホームを地平に移動させ、2面4線のホームを造る計画となっている。今はJR線や新幹線のホームまで遠く、乗り換えも不便だが、地平化で改善を図る。2面4線となることで、特急など優等列車との待ち合わせや待避ができるようになり、融通の利く鉄道運行も可能となる。

またガイドラインには、品川駅の南側にある“開かずの踏切”、八ツ山橋踏切の解消・立体交差化もうたわれている。減速を強いられていた踏切付近のS字カーブがなくなれば、運行のスピードアップにつながる。現在も品川─羽田空港(国際線)を最短12分で結ぶが、所要時間がさらに短縮される可能性がある。

一方、心中穏やかでなさそうなのが西武ホールディングスだ。同社は品川駅の西側、高輪地区にプリンスホテルをはじめとした広大な土地を有している。今後、品川駅北周辺地区にMICE(会議場、展示場、ホテルなどの複合施設)機能が加われば、西武の地盤である品川駅西口地区と競合しかねないからだ。

ただ、「それぞれ機能分担を図れるはず」との声もある。というのも、プリンスホテルは宿泊施設と会議場が一体となっており、要人の滞在などに適している。通行量が多くなる品川駅北周辺地区とは役割も異なるというわけだ。MICE施設が多くなれば、国際交流拠点としての存在感が増すとの見方もある。

今後、注目が高まりそうなのが、品川駅の地下利用だ。実際、ガイドラインにも駅を挟んだ東西の区画について、「鉄道新線を踏まえた地下空間の歩行者ネットワークの検討」が明記されている。

東西に走る新線も視野

リニア中央新幹線は品川駅の地下に建設が予定されており、歩行者道の設置はリニアへの乗り換えを意識したもの。むしろ気になるのは「鉄道新線」という言葉だ。この点について、東京都都市整備局都市づくり政策部の担当者は「現時点で具体的な計画があるわけではないが、将来、(品川駅の下を東西に走る)鉄道が通ることも視野に入れている」と説明する。

このまちづくりガイドラインに基づく再開発は、5~6年で完成するものから、数十年かかるものまである。今後、まちづくり協議会が発足する予定で、計画の調整が行われ、順次都市計画が決定。再開発が進むことになる。20年の東京五輪、27年のリニア開業など、節目の年までに再開発案件をどこまで具現化できるかが、この先の注目点となってくる。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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