それでも、心筋炎や心膜炎の症状が確認された患者323人のうち、309人が入院後まもなく退院し、9人が2週間以上の入院となった一方で、14人は入院もしていなかった。また、日本国内ではこれまで100万接種あたり0.6~0.8件との報告にとどまっている(ただし若年層の接種が進めば数字は変わってくるだろう)。
いずれにしても、接種後にもし胸の痛みや呼吸困難、脈拍の乱れを感じたら、直ちに受診していただきたい。心筋炎・心膜炎でも迅速に適切な治療を受けられれば、大事には至らない。
デマ拡散で巨額の収益を上げる「反ワクチン産業」
その他、新型コロナワクチンの副反応に関しては、世界中で突拍子もないデマが流れている。
鉄が含まれるわけでもないのに注射部位に磁石がくっつく(腕にマイクロチップが埋め込まれる)、DNAに組み換えが起きる、女性は不妊になる、といった類だ。耳にしたことのある方も多いだろう。
悪質なのは、こうしたデマが意図的に、ごく一握りの人間の利益のために生み出され、世界中に拡散されていることだ。かつては「運動」レベルだった反ワクチンキャンペーンが今や「産業」にまで成長し、人類に不利益を生じさせている。
アメリカ・英国で展開している非政府組織CCDHの報告書によれば、今年2月1日から3月16日までの1カ月半の間に、主にFacebookとTwitterを通じて世界に81万2000件のワクチン関連デマが発信された。その65%は、わずか12人(22組織)の反ワクチン運動家の活動から生み出されたものだったという。
彼らは自然派を謳い、政府の陰謀説を流布し、新型コロナウイルスの存在を否定するなどして、ワクチンや医師を貶めようとしてきた。センセーショナルなメッセージが耳目を集め、今年3月までにSNS上でのべ5920万人ものフォロワーを獲得した。最新の報告書では、その数は6200万人を超えている。
反ワクチン業界は、そうして集めたフォロワー相手にセミナーを開き、会費を徴収し、サプリメントや本の販売などを行ってきた。CCDHの別の報告書では、業界全体の収益は年間少なくとも3578万ドル(39億円超)に上ることが示されている。のみならずアメリカ連邦政府の給与保護プログラム(PPP)からも、少なくとも合計151万ドル超(1億6600万円弱)の融資を受けている。
実質的にその片棒を担いできたビッグ・テック(Google、Facebook、Instagram、YouTube、Twitterといった世界的規模のアメリカIT企業群)に対しても、批判が高まっている。
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