「台湾産ワクチン」接種開始が内外に広げる大波紋

野党は緊急使用許可に疑問投げかけるが…

しかし、現在、日本国内で接種しているファイザー・ビオンテック社製やモデルナ社製のワクチンも第3フェーズの臨床試験は継続中だ。仮に民進党の意向が働いて高端社がEUAを取得できたとするならば、もう1社の連亜生技社(UBIアジア)にもEUAを与え、国内ワクチンの拡充を図ったはずだ。しかし実際には、アストラゼネカ製に比べ劣っていたとしてEUAは見送られた。このことからも、専門家による厳格な審査がなされたと考えるのが自然である。

また、海外渡航について言えば、2021年8月初旬にアメリカが入国に際してはワクチン接種を義務化することを検討しているとの報道があった。しかし、8月19日時点で、EU各国においては、台湾人はPCR検査などの陰性証明があれば入国可能である。今後の情勢にもよるが、少なくとも現在はワクチン未接種で海外旅行ができないことはない。

アメリカも期待するワクチン輸出

さらに高端社製ワクチンに一層の期待が高まるニュースがあった。8月19日、台湾中央感染症指揮センター(台湾CDC)指揮官の陳時中・衛生福利部長(厚生相)は、前日にアメリカ在台湾協会(AIT、実質的な台湾でのアメリカ大使館)のサンドラ・オウドカーク代表がCDCを訪れ、新型コロナワクチンに関するアメリカと台湾両国の政策とワクチンパスポートを含む入国管理などについて話し合ったことを明らかにした。議題には両国ワクチンの相互承認も含まれており、アメリカが高端社製について注目しているという。

NIHの強力なバックアップの下で開発されたワクチンなので、アメリカ政府が注目するのは当然のことだろう。ただ、このニュースは単に国民党を中心とした台湾内の高端社製反対派や、中国へ牽制のサインとなっただけではない。今後、新型コロナワクチンでも、台湾は半導体のように世界進出の可能性を示唆しているのだ。

中国がワクチン外交を各国で展開する中、アメリカとしても自国の「血を分けた」ワクチンが、自らの供給不足分をカバーできるかもしれない。国際政治の面からも、台湾産ワクチンの動向は目が離せないのである。

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