ボクシング「入江聖奈」好感度あふれる人柄の魅力 炎上した張本氏への「アッパレ!」の清々しさ

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そもそも入江選手のカエル話自体が面白いことは間違いありません。カエルタオルやカエルマスクを持って登場するのは当たり前。「カエルTシャツを着てきたので見てもらってもいいですか?」と切り出し、それがすでに亡くなった「千代子」を撮った「世界に1枚の私だけのTシャツ」。さらに飼っているクランウェルツノガエルの「ジャイ子」を紹介し、「つぶらな瞳とプリプリした体型と人間味あふれる表情」とチャームポイントを熱弁したほか、金メダル獲得後にすぐ二子玉川でカエル探しをしていました。

抜群の「テンポ」「長さ」「フレーズ」

新しいエピソードがテンポよく次々に飛び出すうえに、それぞれのコメントが短くフレーズも強烈なため、起用する側にとっては、いわゆる“撮れ高だらけ”の状態。テレビも新聞もネットも、こんなにコメントを使いやすいアスリートはいないでしょう。入江選手のインタビューを聞いていて笑顔になれるのは、人柄がいいからだけではなく、「テンポ」「長さ」「フレーズのチョイス」という3点で優れているからなのです。

面白いので、そのほかの印象的なコメントを挙げておきましょう。金メダルを獲った夜、「迷子になって選手村の同じところをグルグルしてしまい、警備員さんに聞いて40分かけて帰りました」。金メダル獲得後の反響を聞かれて、「ツイッターとかでも“フォロワー様”が増えてちょっとビックリしてます」「夜ご飯買いに行ったら、話しかけられちゃいました(笑)」。「大学では心理学のゼミで“浮気の境界線”について研究しています」「好きなタイプは、えなりかずきさん」。

いずれも聞いているこちらが笑顔を誘われるようなものばかりであり、入江選手は大会や番組だけでなく、公私のどんなシーンにも対応したコメントのできる人なのでしょう。

すでに「行動が注目される」自覚あり

入江選手は東京スポーツのインタビューで、「みんなと同じことをしていても金メダリストという付加価値がつき、良くも悪くも行動が注目される。信号無視とか絶対にできないですし(笑)。イヤホンで音楽を聴きながら自転車通学することすら引け目を感じてしまう」とコメントしていました。

やはり入江選手はボクシングのときと同様に、視野がクリアで周りがよく見えているのです。これほど地に足のついた人物である以上、ネット上に書かれている「テレビは入江選手に手を出さないでほしい」「バラエティで安易にイジるな」などの懸念は無用でしょう。

テレビにしろ、ネットにしろ、メディアに登場するだけで人々の笑顔を誘える人物は、そうはいません。現在大学3年生で学業もありますが、この秋から年末年始にかけて引き続き多くの場で私たちを楽しませてくれるのではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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