ボクシング「入江聖奈」好感度あふれる人柄の魅力 炎上した張本氏への「アッパレ!」の清々しさ

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入江選手はリングに上がる前から満面の笑みを見せ、笑顔のまま四方に頭を下げるなど、愛嬌たっぷりの姿で入場。ゴングと同時に前に出て、連打を受けても引かずに打ち返すなどの果敢なファイトスタイルながら、試合中もレフェリーに深々と頭を下げるシーンが何度となく見られました。

「ベリーセンキュー」と言いながら退場

さらに最終ラウンド終了のゴングが鳴った瞬間、健闘をたたえ合うように相手選手にハグし、リングを降りると「ベリーセンキュー」と言いながら退場。礼儀正しいだけでなく、愛嬌があり、壁を作らずに人と接する姿勢が「いい人なのだろう」という印象につながっていました。

2020東京五輪「ボクシング 女子フェザー級決勝」で戦う入江聖奈選手(YUTAKA/アフロスポーツ)

試合後のインタビューでは、「本当はめちゃくちゃ緊張していてご飯ものどを通らないくらいだったんですけど、入場だけは笑顔でいこうと決めていたので」「(レフェリーにお辞儀をしていたのは)「反則の減点をされたくなくて、印象をよくするためでした。全然いい子じゃないです」などと本音を披露。カッコつけず、「いいことを言わなきゃ」という気負いもなく、ただただ笑顔で率直に話す姿が日本中の人々に「いい人」というイメージを決定づけたのです。

年齢差を超越した人間性の豊かさ

決勝の相手であるぺテシオ選手について聞かれたときも、「今回で4回目の対戦だったんですけど、人としてもボクサーとしても大尊敬している選手で、『絶対に気持ちのいい試合をしよう』と思っていたので、そういう選手とできてよかったです」とコメント。

涙を流したことについても、「うれし涙を2回も経験できてよかったです。全然泣こうと思っていなかったんですけど、勝手に涙が出てきてしまって。『こうしてうれし涙は出るんだな』と思いました」と語りました。

また、「入江選手にとってオリンピックとは?」という難しい質問に対しても、「『人の温かさってこんなにうれしいんだな』ってオリンピックを通じて凄くわかりました」とコメント。これは「出場前は開催反対のムードに怖さを感じていたが、勝ち進むたびに温かいメッセージが届いてうれしかったから」であり、「金メダルよりも尊いものを得た」というニュアンスで話していたことが人間性の豊かさを感じさせました。

失言をした張本さんへの「アッパレ!」も自然体で言えてしまうところに、そんな人間性が表れています。入江選手は20歳、張本さんは81歳で、2人の年齢差は61歳。私たちは入江選手に、「いい選手であることも、素晴らしい人間性の持ち主であることも、年齢は関係ない」という真理を教えてもらったのかもしれません。

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