五輪経済効果「ここまでアテが外れた」残念な総括 「おもしろうてやがて悲しき五輪かな」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

シンクタンクの試算と組織委の予算は厳密に対応している数字ではないのですが、結果的にそこから1兆円の赤字が出るわけなので、イベントの赤字としては巨額です。ですがそのマイナスはほかの経済効果で埋めることができるかもしれないわけです。

ではその「ほかの経済効果」とは何でしょう。いちばん大きいのが五輪開催に伴う事前のインフラ投資です。実際に東京への招致決定以降、首都高の老朽化対策や、首都圏の鉄道の整備予算が下りて交通インフラ整備事業が前倒しで進みました。都内では民間でも1000億円規模の大型再開発計画が30件以上も起工し、各所に新たな街並みが出現しました。

また重要な点としては既存インフラのバリアフリー化も進みました。都心のJRでもホームへのエレベーターがなかった駅にエレベーターが新設されたり、ホームドアが設置されたりと公共交通機関のダイバーシティー対応も加速しました。

赤字1兆円を上回る経済効果はすでに発現

これらの建設投資についてすべてを合計すると12.9兆円の新規需要が生まれ、121万人の雇用が誘発されると試算されていたのですが、これらの大半はすでに実現しています。言い換えれば東京五輪がなければ日本のGDPは累積でそれだけ低かったことになるわけで、もうこの段階で開催の赤字1兆円を大きく上回る経済的なプラスは手に入ったことになるわけです。

また五輪開催で消費が上向く点は日本経済全体の効果としては無視できないはずです。

政治家は「東京五輪と新型コロナ第5波の拡大は関係ない」と言っていますが、数字を見れば五輪開催とコロナ拡大の時期は一致します。開催前の7月1日に1.02だった新型コロナの実効再生産数(1人の感染者が何人にうつすかの数値)はオリンピック開催後に急増し、開会式の7月23日には1.34、そして8月1日にピークの1.79を記録します。その後閉会式に向けて下降し閉会後の8月中旬時点では1.1台にまで下がっています。(実効再生産数は東洋経済オンライン「新型コロナウイルス国内感染の状況」より)

政府がいくら関係ないと強弁しても、政府がオリンピックというお祭りを主催していれば国民はどうしても外に出て騒ぎ始めるわけです。するとコロナの新規陽性者数は爆発的に増加しますが、結果として消費も増加したことになるはずです。

2021年1~3月期のわが国のGDPは年率で3.9%のマイナス(第2次速報値)だったのですが、8月16日に発表された速報値では4~6月のGDPは年率1.3%のプラスと回復の様相を示しています。この後、11月になれば7~9月の経済成長率が発表されることになりますが、オリンピックが誘発した消費需要だけを考えれば7月後半から8月前半にかけてはそれ以上に経済が成長していたはずです。

次ページ4~6月のGDP1.3%増も先進国の中では低水準
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事