五輪経済効果「ここまでアテが外れた」残念な総括 「おもしろうてやがて悲しき五輪かな」

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このオリンピックの消費誘発効果をプラスの要素と考える一方で、デルタ株のまん延によって緊急事態宣言が日本中に拡大し、お盆の帰省の自粛など政府が逆に経済にブレーキをかけなければならない方向で動いていることは大きなマイナス要素です。東京五輪が国民の外出を増やし、それによって第5波の拡大が加速したという仮定に基づいてお話しすれば、短期的な消費増よりもその後の消費減によるGDPの押し下げ効果のほうが大きいかもしれません。

実際、4~6月期の実質GDP成長率1.3%というのは先進国の中では極めて低い数字でした。ワクチン接種が進んでいるアメリカが6.5%、ドイツが6.1%、コロナでの打撃が大きかったイギリスに至っては20.7%と、社会がアフターコロナへの移行を始めている国々と比べれば、日本の数字は見劣りします。

これらの情報を総合すれば「五輪開催で消費が上向く」という皮算用はトータルでは逆の結果になるのではないでしょうか。五輪で消費が上向き始めたけれどもそのことで逆にコロナが増加し経済に水を差す結果になった。ほかの先進国と比較すれば五輪を開催せずにコロナ対策だけに集中していたほうが、2021年の日本経済はよくなっていたかもしれません。この点は残念な結果になりそうです。

期待されていたインバウンドの盛り上がりは?

さて、みずほFGが試算した30.3兆円の五輪の経済効果ですが、実はまだ実現していない大きな項目で、しかも今回の開催方式の結果おそらくこれから先も実現しない可能性の高まったものがあります。それがインバウンド(訪日外国人旅行)での拡大効果です。

みずほFGは東京五輪が生み出す観光需要増大効果を12.7兆円、それに伴う雇用誘発効果を180万人と試算しており、東京五輪の経済効果としては最大級の要素として挙げていました。

根拠としては過去の開催国、オーストリア(2000年)、ギリシャ(2004年)、中国(2008年)、イギリス(2012年)ともに開催決定前のインバウンドのトレンドラインを大きく上回る形で外国人観光客が増加しているという事実があるのです(2017年公表のレポートのため2016年開催のブラジルについては分析されていません)。

ご承知のとおり2013年から2019年にかけて日本はインバウンド消費で沸き、2019年には3188万人の外国人が日本を訪れました。みずほFGのレポートではオリンピック開催で2020年には3600万人を超えることが予測されていたのですが、新型コロナで逆に2020年は411万人まで訪日外国人数は落ち込んでしまっています。

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