ルール無知で事故増「電動キックボード」の大問題 ひき逃げ事故によって首の骨を折った被害者も

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――「次世代モビリティ」の普及を目的に電動キックボードの規制緩和が進んでいます。警察庁の有識者検討会では時速15キロ以下で走行すれば、免許不要、ヘルメットなしという案も出ています。いくつかの自治体で実証実験も進んでいます。違法走行や事故が起きている中で規制緩和に突き進んでいいのでしょうか。

「移動手段が増えると、便利になります。でも当然ながら乗り物の数や種類が増えるほど、事故のリスクは大きくなりますよね。実証実験で定められている電動キックボードの最高速度は時速15キロで、自転車の速度とそう変わりませんが、電動キックボードの存在や交通ルールなどが全く周知されていませんし、自転車よりも小回りが効いて歩行者との接触可能性が高いことから、事故は確実に増加すると思います。

規制緩和で便利な世の中を作っていくことも大事ですが、安心安全な社会を形成していくことはそれよりももっと重要なはずです。バランスが悪そうなので、私は乗ろうとは思いませんが…。

保安基準を満たさない電動キックボードを販売する事業者もいると聞いています。強く取り締まらなければなりません。

さらに、私が大きな問題だと思うことが保険制度です。日本ではあまり論じられていませんが、加害者が任意保険に加入していなくて賠償能力がない場合、被害者が泣き寝入りするケースが非常に多いのです」

任意保険への加入も強く推進していくべき

――公道を走る全ての自動車やバイクは自賠責保険の加入が義務付けられています。

「ですが任意保険への加入も強く推進していくべきです。例えば、むち打ちで後遺障害14級の認定を受けた場合、だいたい損害額は400万円程度にのぼりますが、自賠責保険で支払われるのは約200万円弱程度にしか過ぎません。残る200万円の損害は、加害者が任意保険に加入しておらず、かつに賠償能力がない場合は、被害者は泣き寝入りするしかありません。

損害保険料率算出機構の調査によると、二輪車の任意保険加入率は42%です。原動機付き自転車に限ると3割に下がります。電動キックボードの加入率はもっと低いのではないでしょうか。

大阪のひき逃げ事故を起こした加害者が保険に入っていたのかは報道ではわかりませんが、乗る側の責任として保険加入を意識してほしいです。今は、保険会社が電動キックボードなど次世代モビリティ向けの保険も販売するなど、選択肢が増えています。

まとめると、利用者が電動キックボードに関する法律や走行ルールについて正しい知識を持ち、安全な運転をすることが大前提です。そのためには警察が電動キックボードを乗る人を対象にした講習を繰り返し行うことが求められます」

(ライター・国分瑠衣子)

■取材協力弁護士
和氣 良浩(わけ・よしひろ)弁護士
平成18年弁護士登録 大阪弁護士会所属 近畿地区を中心に、交通・労災事故などの損害賠償請求事案を被害者側代理人として数多く取り扱う。
事務所名:弁護士法人ブライト
事務所URL:https://law-bright.com/

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