根拠なき熱狂の再現?ビットコインのナラティブ よくわからない「最新技術」に踊らされる理由

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さらにピーター・ガーバーは著書『有名な初のバブル』(2000)で、バブルがずいぶん長続きすることを指摘している。

17世紀のチューリップ狂乱の後もずっと、珍しく美しいチューリップは、そこまで極端ではないにしても、高い価値を持ち続けた。ある意味で、チューリップ狂乱は今日ですら、抑えられた形で続いている。同じことがビットコインにも起こるかもしれない。

それでもビットコインの価値はきわめて不安定だ。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』の見出しによると、ある時点で、ビットコインの米ドル換算価値は、何かことさらニュースがあったわけでもないのに、40時間で40%も上昇した。

技術をよく理解している人は少ない

こんな変動性は、価格の落ち着かない上げ下げにつながりかねない、経済ナラティブの疫病的な性質の証拠だ。

ビットコインの技術的な説明は控える。ただ、それが何十年もの研究の賜物であることは述べておこう。ビットコインの取引をする人で、その技術を理解している人はほとんどいない。

ビットコインマニアに出くわしたときには、しばしばその根底にある概念や理論を説明してくれるよう頼んでみる。たとえばマークルツリーや楕円曲線デジタル署名アルゴリズムなどだ。あるいは、ビットコインを限られたスループットの混雑待ち行列ゲームの等価物として描いてくれるよう頼んでみる。

通常、ぽかーんとした顔がかえってくるだけだ。だから最低でも、理論はこの物語の中心的なものではない。だれかきわめて賢い数学者やコンピュータ科学者がこの発想を思いついたという基本的な理解くらいしかない。

ロバート・J・シラー 米イェール大学教授

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Robert J. Shiller

ノーベル賞受賞経済学者。1972年にMITで経済学のPh.D.を取得。「資産価格の実証分析」を評価され、2013年にノーベル経済学賞を受賞。2000年に刊行された『投機バブル 根拠なき熱狂』は、アメリカのITバブル崩壊を予言した書としてベストセラーとなった。同じくノーベル経済学賞を受賞(2001年)したジョージ・A・アカロフとの共著『アニマルスピリット』も、サブプライムローンに端を発する金融危機を理解する書物としてベストセラーとなった。著書に『それでも金融はすばらしい』『不道徳な見えざる手』(アカロフとの共著)など。

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