東京五輪での熱狂が台湾に突きつけた重要問題 改めて認識された「アイデンティティ-」や「大陸」の存在感

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台湾で東京五輪を盛り上げた主役の1人、重量挙げ女子59キロ級で金メダルを得た台湾の郭婞淳選手(写真・AFP=時事)。

7月23日から8月8日まで開催された東京五輪で、ホストだった日本と同様、台湾も空前のメダルラッシュに沸いた。史上最多となる金メダル2種目、銀メダル4種目、銅メダル6種目を獲得。コロナ禍の特殊な大会で盛り上がりに欠けると一部で心配されたが、台湾人選手の連日の活躍もあって視聴率は大変好調だったという。ソーシャルメディア(SNS)の発達も相まって、人々の五輪への関心はかつてないほどの盛り上がりを見せた。

一方、人々が熱狂すればするほど、台湾が抱える問題も、改めて浮き彫りになった。

まずは、人々のアイデンティティーの問題だ。

「台湾です!」の一言で特別な大会に

今大会は、開会式から台湾人の心を刺激することが起きた。NHKの和久田麻由子アナウンサーが台湾選手団の入場の際に、「台湾です」と言ったことに人々が強く反応した。入場もあいうえお順で中国よりも先に入ったことで、人々の興奮度は最高潮に達した。

和久田アナウンサーの台湾という呼び方は、多くの日本人にとっては違和感のない日常の一コマである。しかし、日頃から国際社会で台湾を名乗れない人々にとって、外国メディアが参加名であるチャイニーズ・タイペイではなく、台湾と堂々と紹介したことに、今大会がいつもと違うと感じるきっかけになったのだった。

現在の台湾にとって、日本は間違いなく最も重要な友好国の1つに位置付けられている。安倍晋三政権下で進んだ友好関係の深化に加え、先の新型コロナワクチンの支援で絆はかつてないほど強固になった。そんな中、選手入場でのハプニングは、偶然にも日本は本当に台湾を重視しているとアピールする結果になっただろう。はたしてタイペイの「た」だったのか、あるいは本当にタイワンの「た」だったのかは、大して重要なことではない。台湾人の中で日本と東京大会が特別なものになったのは間違いない。

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