東京五輪での熱狂が台湾に突きつけた重要問題 改めて認識された「アイデンティティ-」や「大陸」の存在感
今回、SNSをきっかけに暴露された利用者には、プロスポーツ界の経営者や国民党系の大物政治家ら、社会に影響力を有する人々が含まれている。装置自体は今もウェブで簡単に購入できるそうなので、実際にはかなりの数が市場に出ていると考えられる。
これによって配信されたコンテンツは、タダ同然で市場に流れるため、コンテンツ制作者・提供者には何ら利益をもたらさない。そうなるとコンテンツの品質低下や経営難を招きかねない。それが巡り巡って、視聴者自身にも悪影響を及ぼす。業界でよく見掛ける違法コンテンツによる市場崩壊のパターンだ。
例えば東京大会の場合、台湾のテレビ局は自国視聴者向けの試合を中心に、IOCなどに巨費を投じて放映権を購入し放送している。ところがこれらリアルタイム視聴者が、自宅マンションの壁の向こうから数秒遅れで歓声が聞こえるという笑い話がネット上で報告された。どうやら装置利用者が、普段のクセで、装置経由で試合を観戦したため、歓声にタイムラグが生じたらしい。
台湾中高年世代の遵法意識の劣化も
ストリーミング配信はこれからも多種多様化する一方、人々の遵法意識はより高いレベルを求められるのは言うまでもない。しかし、筆者の感覚として、このような著作権に対する意識が低い層は、戒厳令下末期の違法コンテンツが氾濫していた時代に生まれ育った、現在の中高年世代に多く見られると感じるのだ。
上記のプロスポーツ界経営者や大物政治家の2人もこの層に当たる。あの頃の人々は、外国の情報、特に日本のエンターテインメントに飢えていて、少なからずそれらのエネルギーが後の民主化を後押ししたのは否めない。
しかし他方で著作権に対する意識は、民主化後に生まれた世代に比べ遅れているのをよく目の当たりにするのだ。彼らの意識のさらなる引き上げの必要性が、今大会で明るみに出たのではないだろうか。
東京2020大会は、台湾に多くの栄光や自信をもたらしただけでなく、向き合うべき課題が明らかになった大会だったと言えよう。
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