自然消滅した「母さん助けて詐欺」命名の裏事情

振り込め詐欺の新名称をTwitterで募集した

警視庁初の公式ツイッターアカウントを無事に開設し、次に振られた仕事は「振り込め詐欺の新名称を考えること」でした。当時の様子をご紹介します(写真:redpixel/PIXTA)
最近では官公庁のTwitter(ツイッター)アカウントをよく見かけるようになりましたが、「警視庁初のアカウント」導入にはたいへんな苦労があったようです(『「警視総監まで決裁」警視庁Twitter開設の裏話』)。
紆余曲折ありながらも警視庁初の公式ツイッターアカウント(@MPD_yokushi)を無事に開設した中村健児さん(当時警部)にある日振られた仕事は「振り込め詐欺の新名称を考えること」でした。ツイッターで公募したものの……決定までにさまざまな波乱があったようです。
中村さんの新著『中の人は駐在さん:ツイッター警部が明かすプロモーション術』を一部抜粋し再構成のうえ当時の様子を明かしてもらいました。

巧妙化する詐欺の手口

特殊詐欺は、その手口が循環します。架空の取引を持ちかけたり、土地転がしのような債権債務にからんだりするような詐欺ではなく、ありもしない物語を電話で語り、債権債務に基づかない金銭の交付を行わせるものが特殊詐欺です。

この手口が登場したばかりの頃は、犯人が用意した預貯金口座にお金を振り込ませる手口でした。当然、警察はこの手口に対応するためATMの利用限度額を引き下げさせるなどの対策を講じました。実のところ、ATM利用限度額引き下げは、あまり効果がありませんでした。

そもそも被害を根本的になくすための対策ではなく、被害金額を少なくさせる効果しかないのですから。被害を減らす効果がないうえに、高齢者がわざわざ金融機関の窓口に赴いてATMの利用限度額を引き下げる手続きを行わなければならないのです。必要のないこと、義務のないことを行わせるための行動を起こさせるのは並大抵のことではありません。

それでも、ATMを使った振込みが多少はやりにくくなったのでしょう。次は、犯人が現金を受け取りに来る「手渡し型」の手口に移ります。これは犯人側にしてみれば被害者と現実社会で接触することになるため警察に検挙されるリスクが高くなります。もちろん、警察は被害者と犯人が接触する現場で犯人を検挙しようとします。

ただ、残念なことにこれで検挙されるのは、いわゆる「受け子」といわれる主犯格の組織とは面識のない使い捨ての駒でしかなく、組織にダメージを与えることができません。警察は、現場検挙の態勢を維持しつつ、被害者が現金を調達する金融機関の窓口で被害を防止しようとしました。高額の現金調達の場合、警察に通報してもらうよう依頼したのです。

窓口での現金調達阻止と現場検挙で現金手渡し型の特殊詐欺がやりにくくなってくると、手口は再び振込み型へと変遷しました。還付金詐欺の登場です。前回の振込み型は明らかに振り込むという手続きを踏ませていましたが、還付金詐欺は被害者に振込みを行っていると思わせないところが大きな違いです。

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