デルタ株が中国の「封じ込め策」を突破した衝撃 強硬策とれる国家でもあっという間に拡散
「ここまで多くの省に広がってしまうと抑制は極めて難しい」と、イェール大学で公衆衛生学を専門とするチェン・シー准教授は指摘する。「世界のほかの地域にとっては衝撃だろう。なにしろ、中国のような強力な国家(による厳格な対策)でさえデルタ株に突破されたのだ。その教訓はとても重い。私たちは警戒を緩められる状況にはない」。
中国の孫春蘭(スン・チュンラン)副首相は7月下旬、デルタ株の流行は「意識や考えの緩み」のせいだとし、当局に対策強化を促した。「一瞬たりとも気を緩めることはできない」と孫氏は語った。
中国の専門家はイスラエルとイギリスに注目
中国の公衆衛生専門家からは、封じ込め戦略を見直す時期が訪れたとする声があがるようになっている。新型コロナ対応で中国政府の顧問を務める張文宏(ジャン・ウェンホン)氏は最近発表した論文で、イスラエルやイギリスに近いモデルに従うことを提案した。イスラエルやイギリスのようにワクチン接種率が高い地域では、感染との共存が人々に受け入れられている。
今のところ中国は、これまでどおりの厳格な対策から軸足を移そうとはしていない。政府は全土を対象に不要不急の移動を行わないよう国民に指示した。張家界市と株洲市では540万人が外出を禁じられている。7月に死者の出る洪水に見舞われた鄭州市は、感染が増加したことから住民約1300万人がウイルス検査の行列に並ぶ羽目となった。
デルタ株による現在の感染拡大が最初に始まった南京市では、何百万人もの住民が4回目の大規模検査に参加しなければならなくなっている。
アメリカ外交問題評議会のグローバルヘルス担当シニアフェロー、ヤンゾン・ファン氏は、中国の「封じ込めを基本とする」戦略は、とりわけ新たな変異株が出現し続けている中では長期的に機能しなくなると話す。「とんでもなく費用のかかる戦略だからだ」。