デルタ株が中国の「封じ込め策」を突破した衝撃 強硬策とれる国家でもあっという間に拡散

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それでも中国はリスクを伴う方針転換には乗り気でないようだ。武漢市ではデルタ株の感染者が3人見つかっただけで、住民1200万人の全員検査が開始された。5人の感染が確認された北京市では、23都市からの列車が運休になった。

中国政府にとっての課題のひとつは、デルタ株に対する中国製ワクチンの効き目がほかのワクチンよりも弱いことだ。政府によれば、中国の接種回数はすでに約16億9000万回に達している。保健当局は現在、免疫の弱い人や高齢者に3回目の追加接種を行うことを検討している。

デルタ株による現在の感染拡大は、7月10日に南京に到着したモスクワ発のフライトと関連づけられている。このフライトの乗客7人がデルタ株に感染していたためだ。7月20日には、空港清掃員9人が検査で陽性となり、感染は南京空港を訪れた人々の間で急速に広まった。

南京空港に乗り継ぎで2時間滞在した後、張家界市に飛んだ女性とその娘、12歳の少女の全員が検査で陽性となった。常徳市で広がった集団感染も、張家界市に出かけた別の観光客3人と結びつけられている。これら観光客はリバークルーズに参加していた。このリバークルーズから少なくとも6カ所、約27人に感染が広がっている。

当局の初期対応に怒る住民

南京市に住むハン・シャオイーさん(23)は、南京で広がったデルタ株の感染について、政府の初期対応に怒りを感じていると話した。混雑した地下鉄やバスで市民が通勤し続けるのを当局が許したからだという。

営業の仕事をしているハンさんは最近、4回目の検査を受けるために仕事を休んで何時間も行列に並ばなければならなくなった。「これが始まったとき、本当に暗い気分になった。パンデミックはどこか遠くに行ったと思っていたので」とハンさん。「いきなりパンデミックのど真ん中に引き戻された気分です」。

(執筆:Sui-Lee Wee記者、Elsie Chen記者)

(C)2021 The New York Times News Services

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