マンション管理組合を揺るがす高齢問題の打開策 「終の棲家」にするために民事信託という選択肢

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にもかかわらず、居住者の高齢化の進展が各人の行動力や判断能力を衰退させようとしている。前出の「マンション総合調査(平成30年度)」によると、分譲マンションの「世帯主年齢60歳以上」の割合が49.2%まで拡大した。過去を振り返ると、20年前(平成11年度)が25.7%、10年前(同20年度)が39.4%だった。

これが平成30年度、ついに2世帯に1世帯(49.2%)が高齢者世帯となった。筆者には、少子高齢化に苦しむわが国日本の「縮図」が投影されているように思えてならない。もしかしたら、高齢化の進展でマンションの管理組合運営が機能不全に陥るのではないか――。こうした懸念を抱かざるをえない現実が足元まで押し寄せて来ている。

2025年、高齢者の5人に1人が認知症になると推計

4年後の2025年、戦後のベビーブーム時に生まれた団塊の世代の人たちが、全員、後期高齢者(75歳以上)になる。「2025年問題」と呼ばれ、高度経済成長に大きく貢献した世代が負担から給付の側に回る。

加えて、内閣府の「平成28年版高齢社会白書」によると、2012年時点で約462万人だった65歳以上の認知症患者数が2025年には約700万人になると推計されている。実に、高齢者(65歳以上)の約5人に1人が認知症に罹患する計算だ。

分譲マンションを取り巻く環境にも「高齢化の弊害」が忍び寄っているのは周知のとおり。いまや国内のストック数は約675万戸(2020年末時点)に達し、国民の1割超が分譲マンションに居住している。こうした点を考慮すると、高齢の区分所有者が認知症を発症する可能性を想定しないわけにはいかない。マンション管理組合にも居住者の認知症に対するリスクマネージメントが求められる。

では、区分所有者が認知症になると、マンション管理にどのような悪影響を及ぼすのか。

改めて、認知症とはいったん発達した知的能力がさまざまな原因で持続的に低下した状態をいう。記憶障害や理解・判断力の障害、また、時間や方向の感覚がなくなる見当識障害などを発症する。さらに計画が立てられなくなったり、その場の状況が読めなくなったりする症状もあり、進行すると徘徊や奇声、暴言や暴力へと発展し、マンション住民に迷惑をかける可能性がある。

管理費や修繕積立金の滞納が常習化したり、毎年開催される総会への出席が困難になったりもする。区分所有者としての義務を果たせなくなれば、管理組合にとって扱いに困る存在になってしまう。

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